2022 Fiscal Year Research-status Report
「生き方としての俳諧」史構築のための基礎研究-惟然作品の網羅的収集と分析-
Project/Area Number |
22K19990
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
金子 はな 豊橋技術科学大学, 総合教育院, 助教 (80964618)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 俳諧 / 芭蕉 / 蕉門 / 惟然 / 生き方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究がめざす最終的な目的は、「芭蕉の俳風」を基準とする従来の俳諧史を、芭蕉と弟子たちが真に追究した「生き方としての俳諧」の視点によって再構築することであり、そのための基礎研究として、惟然の発句・連句作品の網羅的な収集・整理と分析評価を行なうものである。 初年度にあたる2022年度は、近世の版本または写本を参照し、惟然作品の収集を行なった(ただし、原本の写真を文献複写等で取得できる場合はその方法によった)。このうち天理大学天理図書館における文献調査では、従来の全集類には収録されていない発句を発見した。一般には惟然の作品として知られていない句であったため、通釈および成立事情・季等の解説を加え、論考として発表した(「惟然「南風口の」句考」『俳文学研究』79号, 2023年3月)。 作品の収集と並行して分析評価の視点についても研究を進め、進展があった。広く海外の俳諧・俳句研究にも目を向け、調査を進めた結果、ドイツの日本文学研究者Ekkehard Mayが示した惟然発句注釈の視点が、本研究に大いに裨益するものであることがわかったため、その特徴と意義を論文「Ekkehard Mayの惟然発句注釈――ドイツにおける俳諧(俳句)受容」(『雲雀野』45号, 2023年2月)において論じた。 また時期は前後するが、2022年9月24日に開催されたシンポジウム「「かるみ」の新展開」(俳文学会東京研究例会)にパネリストとして登壇し、著書『惟然・支考の「軽み」―芭蕉俳諧の受容と展開』(武蔵野書院、2021年)で論じた芭蕉の表現理念「軽み」について、発表者の中森康之・谷地快一、会場の参加者との意見交換を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は研究計画の通り、作品収集を中心に進めた。発句については、現在入手可能な文献資料の収載作品はほとんど入手できている。その過程で、これまで活字化されたことのない作品を発見し、解説を付して紹介することができた。連句については一部入手が完了していないものもあるが、収録資料の確認は済んでおり、研究期間内に収集を完了できる予定である。加えて作品の分析・評価の視点についても、海外の研究から新たな知見を得ることができた。これらの点から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り進める。 収集した資料をデータ化・テキスト化し、エクセル等のソフトに入力して項目ごとにソートできるよう整理する。作品の分類項目としては、成立年・季・収録媒体の種別(版本・写本・短冊・懐紙)・書名・刊行年等を設ける予定である。句の成立事情について特記すべき事項があれば、備考として加える。以上の作業を通じて惟然の全作品が手元に揃うことになるので、全体的な表現傾向の流れ、各作品の傾向(思想の影響、語彙の性質、表現法)を分析し、惟然の俳論に表明された「生き方としての俳諧」の追究との本質的な関連性を考察する。またその過程で得た成果は、現在メンバーとして参加している研究会(オンライン、週一回開催)や学会において随時発表し、フィードバックを得たいと考えている。
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