2023 Fiscal Year Research-status Report
上代日本の韻文における生死の表現および『万葉集』の長歌・歌群の修辞法の研究
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22K20001
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
大島 武宙 武蔵野大学, 文学部, 講師 (40964606)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 万葉集 / 大伴家持 / 柿本人麻呂 / 挽歌 / 近現代短歌 / 上代文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
・『万葉集』所載の大伴家持「悲世間無常歌」(巻十九・4160~2)の表現および家持の長歌における同語反復の技法について論じた研究論文「大伴家持歌における歌句の連携的用法ー「悲世間無常歌」の表現から」を「萬葉」誌に投稿(2024年5月刊行予定)。『万葉集』所載の柿本人麻呂「泣血哀慟歌」第一歌群(巻二・207~9)における作中の「われ」の認識と行動を検討した研究論文「柿本人麻呂「泣血哀慟歌」第一歌群の展開」を「国語と国文学」誌に投稿(2024年8月刊行予定)。『万葉集』所載の「遣新羅使人歌群」における死の表現を検討した研究発表「遣新羅使人歌群・雪連宅満挽歌群の展開」を上代文学研究会で行った(2023年10月28日、於東京大学)。平安期から近現代に至る『万葉集』の研究・受容の歴史を概観する記事を「短歌研究」誌に寄稿した(2023年9月号)。 ・敗戦後の「第二芸術論」と塚本邦雄、大岡信、葛原妙子の関係を論じた研究論文「歌と意味のあいだに」を「現代詩歌研究」に寄稿した(2024年3月刊行)。塚本邦雄(「詩と思想」2023年8月号)、寺山修司(「現代短歌」2023年9月号)、小池光(「短歌研究」2023年8~10月号)など、近現代の歌人についての評論を執筆、発表した。穂村弘『短歌のガチャポン』(「歌壇」2023年7月号)、三枝昂之『佐佐木信綱と短歌の百年』(「東京新聞」2023年10月14日)、木下龍也・鈴木晴香『荻窪メリーゴーランド』(「歌壇」2024年3月号)などの書評を執筆した。 ・ピーター・マクミラン氏を中心とする『万葉集』の英訳プロジェクトに参加、本文の英訳や解説の執筆に協力(未発表)。トークィル・ダシー氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)の著書『万葉集と帝国的想像』の品田悦一氏、北村礼子氏による邦訳(2023年10月刊行)に協力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
『万葉集』の挽歌を中心とする歌表現の研究にあたって、一つの作品を詳細に読解し、新たな解釈を提示する論文と、複数の作品にわたる修辞意識をあきらかにする論文と、異なるアプローチによる研究成果を出すことができた。それによって上代日本の歌表現についてより具体的に考察することが可能になった。また、近現代の短歌、批評を精査することにより、従来よりも客観的に『万葉集』に向き合う方向性を示す準備ができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、『万葉集』所載の挽歌を中心とする諸作品について検討を進めている。高市皇子「十市皇女挽歌」、柿本人麻呂「泣血哀慟歌」第二歌群、山上憶良「熊凝哀悼歌」、遣新羅使人歌群中の「雪連宅満挽歌」などの表現を検討することにより、生と死をめぐる挽歌の発想と表現の諸相をあきらかにすることを目指す。またそれと並行して、柿本人麻呂作歌の長歌における対句の技法の整理、分類を通じて、歌という表現が上代において持っていた可能性と限界を見定めてゆく方針である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響、学会や研究会のオンライン化により、移動にかかる経費が予想よりも少額ですんだこと。同じ分野の研究者から書籍の譲渡を受けることが多く、書籍購入の費用も少額ですんだことが理由としてあげられる。
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