2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K20002
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
後藤 渡 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (80961656)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ジョルジュ・ペレック / アダプテーション / フランス文学 / ラジオ / 映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的はラジオという場から60年代から70年代のフランス文学を概観しようという点にある。目的達成のためには、前提となるラジオという場について、作家と音楽家によるラジオドラマの分析、ラジオからテクストへの影響という3点を詳らかにする必要がある。研究の対象はジョルジュ・ペレックとジャン・チボドーであり、本年度はペレックを中心に上記3点を詳らかにしようと試みた。 初めての点については、フランスにおけるラジオの発展についてエルヴェ・グレヴィアックの著作と本課題に関係のあるORTF(フランス放送協会)の研究局長でもあった音楽家ピエール・シェフェールが主導した音楽家集団についてのエヴリーヌ・ガイユー『GRM、音楽探求集団: 歴史50年』を参照し、戦後のラジオと実験音楽についての概観は完了した。次に、音楽家と作家のかかわりについては、シェフェール、そして彼と同じグループに参加していた音楽家が多く執筆していたLa Revue musicaleの文学と音楽についての特集号を参照した。 第2の点について、チボドーについてはドキュメンタリー『国際サッカー試合のルポルタージュ』の音源と書き起こしを手に入れたのが3月だったため、研究に取り掛かれなかった。しかし、ペレックについては、当初扱う年代から少し下った、77年の『途絶えざる詩』についてアンソロジーのアンソロジーとして構成されている点に着目し、この番組が鏡や記憶の貯蔵庫のような機能を備えている点に目を向けた。ラジオの持つ「媒介」という性質について、テクスト内での映像作品へのほのめかしやテクストそのものが媒介として機能している点に目にも目を向けた。 加えて、ジョルジュ・ペレックと音楽家フィリップ・ドローゴズの関りについても詳らかにした。そのなかで、ラジオからテクストへの影響の一端をみることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスにおけるラジオと作家のかかわりを概観するという目的については、La Revue musicaleの具象音楽と関連する号を収集し、おおよその流れをつかむことができた。 2022年5月に出版されたそれまで未刊行のテクスト『場所』に付された注釈や2023年3月、フランス国立図書館アルスナル館での資料調査により、ペレックの日常生活を詳らかにすることができた。特に作家が定期的にフランス放送協会(ORTF)に通っていたことを明らかにできた点は大きな成果だったのではないだろうか。 本課題を申請した段階で予期していたものの、あえてふれないつもりでいた、映像や記憶の問題も研究課題と深くかかわっており、そうした主題について本年はいくつかの成果を出せた。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の「作家と音楽家によるラジオドラマの分析」について、その背景となる制作の事情については調べられていない。調べられていない理由としては、22年度3月の資料調査の際に国立図書館に通っていたことに加え、ストでフランス国立文章館といったアーカイヴで調査できなかったからである。23年度のどこかで資料調査に赴かなければならないだろう。 加えて、音楽家から見た文学以外にも、作家たちから見たラジオドラマと音楽という視座も研究課題を補完するためには必要である。 ペレックの作品のみでも対象である年代(60、70年代)のラジオと作家について十分に網羅できるが、チボドーやヌーヴォー・ロマンと呼ばれる潮流の中の作家たちにも目を向けると、ラジオと作家のかかわりについてより深い理解が得られるだろう。
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