2023 Fiscal Year Research-status Report
日系オーストラリア文学の可能性を考察する―第二次世界大戦時強制収容体験を中心に
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22K20008
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
古川 拓磨 大谷大学, 文学部, 助教 (40962270)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 日系オーストラリア文学 / 日系文学 / オーストラリア文学 / 日系人強制収容所 / 第二次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2023年2月に実施したオーストラリア(シドニー、キャンベラ、メルボルン、タツラ)での調査結果をふまえ、二度の口頭発表を行った。一度目は2023年9月8日の大谷大学西洋文学研究会2023年度総会にて「脱北米中心日系英語文学の検討―ハワイとオーストラリアの作品を参考に」、二度目は2023年12月17日の日本英文学会関西支部第18回大会にて「オーストラリア日系強制収容文学の考察―Cory TaylorのMy Beautiful Enemyにおける人種・セクシュアリティ表象を手がかりに」と題したものである。以上二つの発表原稿は論文化し、投稿予定のため、現在推敲中である。それぞれにおいて、これまで日系オーストラリア文学が看過されてきた要因や、本年度集中して研究したCory Taylorの小説における日系人強制収容所内のホモーソーシャルな形態の分析について発表した。発表後の質疑応答などをとおして、日系オーストラリア文学は、北米日系人と比較した際の規模の小ささがゆえに、文学作品においても共通の記憶の描写が難しく、個別性や特異性が前景化されがちである点を見出すことができた。 また本年度には「Juliet KonoのAnshu: Dark Sorrowに見られる身体の「移動」と精神性の変容」と題した論文を『西洋文学研究』(第43号、大谷大学西洋文学研究会発行)に投稿した。ハワイの日系人について考察し、オーストラリアと同様のアジア太平洋地域に位置する地域圏における日系人文学研究との連続性を模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では主にCory TaylorとChristine Piperという2人の豪作家を対象とする予定であるが、未だ前者のみしか進捗していない。関連資料の不足が主な原因であるため、残りの期間では 資料収集に尽力しPiperの研究に着手する。
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Strategy for Future Research Activity |
再び渡豪し、資料収集を行う。タツラ強制収容所元看守James Sullivanの手記Beyond All Hate: A Wartime Story of a Japanese Internment Camp 1941-1946: no 4 Internment Camp, Zeglin Road, Rushworth Victoria, Australia (2006)は作品の解釈上重要であると思われ、入手する。またカウラ強制収容所の遺構(ニューサウスウェールズ州)を訪問する。
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Causes of Carryover |
2023年度夏季に渡豪を計画していたが、他の業務などとの兼ね合いで実現できなかったため、次年度使用が生じた。そのため2024年度夏季に渡豪調査を計画している。実施が難しい場合は必要書籍や電子機器の購入に充てる計画である。
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