2023 Fiscal Year Research-status Report
Exploring the processing of Japanese compound verbs in Japanese native speakers and Chinese-Japanese late bilinguals
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22K20032
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
姚 一佳 上智大学, 言語科学研究科, 研究員 (20962989)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 二重経路 / 並列処理 / 複合動詞 / 形態プライミング / 意味プライミング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、二つの動詞が連なって形成された複合動詞(例:食べ歩く)が、日本語母語話者と日本語学習者の心内辞書においてどのように処理されているかを調査するものであった。閾上プライミング課題と閾下プライミング課題を用いて語彙判断データなどの収集を行い、プライムタイプ(例:意味関連、形態関連、無関連、反復)によって語彙判断に要する時間と正確率が変わるかを中心に分析を行った。現段階では、閾下条件における日本語母語話者の心内辞書における複合動詞の処理メカニズムを解明した。 具体的には、以下の2点が明らかになった。第一に、閾下条件では、構成要素の語彙表象を介する「分解ルート」と介さない「統合ルート」の2つのルートが並行的に使われている。実際にどのルートで閾下条件での語彙判断に至るのかは、複合動詞の表層頻度によって決められる。第二に、閾下条件では、複合動詞の認知における形態的と意味的プライミング効果がともに観察された。プライミング効果量には、複合動詞の形態特性による影響が見られたが、意味特性による影響が見られなかった。以上の結果から、複合語処理における英語、中国語と日本語に共通する自動二重経路処理の存在が確認されたが、語の意味の自動活性における日本語複合動詞の特殊性も示唆された。 閾下処理と閾上処理、母語処理と外国語処理、形態処理と意味処理という三つの観点から、複合動詞の処理メカニズムを包括的に解明することは、言語処理研究および言語習得研究における本研究の学術的意義の一つといえる。また、今後の様々な言語処理研究ならびに外国語教育研究に応用できる、複合動詞の語彙特性に関するデータとプライミング実験にもとづく行動データを収録するデータベースを構築することは、本研究の社会的意義の一つといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでは、①複合動詞の親密度に関する調査、②複合動詞の意味的透明性に関する調査、③複合動詞の習得時期に関する調査、④日本語母語話者を対象とした閾下プライミング課題の四つの実験調査を実施し、成果を収めたが、冬休みと春休みを挟んだため、実験参加者の募集に時間がかかった。現在は、⑤日本語母語話者を対象とした閾上プライミング課題と、⑥日本語学習者を対象とした閾下プライミング課題を同時に行っている。以上のことから、本研究課題の進捗状況を「やや遅れている」と自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年上半期に、日本語母語話者と日本語学習者を対象とした閾上プライミング課題を実施する。2024年下半期に、日本語学習者を対象とした閾下プライミング課題を実施する。
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Causes of Carryover |
日本語母語話者を対象とした閾下プライミング課題、中級と上級中国人日本語学習者を対象とした閾上と閾下プライミング課題の実施費用である。本年度の上半期は、日本語母語話者を対象とした閾下プライミング課題、中国人日本語学習者を対象とした閾下プライミング課題を実施し、下半期は中国人日本語学習者を対象とした閾上プライミング課題を実施する予定である。
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