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2022 Fiscal Year Research-status Report

A Comparative Study of Acceptance of Buddhist Discourse among Japanese Post-war Novelists in their Youth

Research Project

Project/Area Number 22K20037
Research InstitutionAichi Shukutoku University

Principal Investigator

橋本 あゆみ  愛知淑徳大学, 文学部, 講師 (10962780)

Project Period (FY) 2022-08-31 – 2024-03-31
Keywords日本近代文学 / 戦後文学 / アジア太平洋戦争 / 仏教 / 知識人
Outline of Annual Research Achievements

初年度(2022年度)は、①近代日本において仏教思想が専門の宗教者以外にいかに受容され、文学などのメディア表象として新たに作り出されていったか、②そこに見られる正統的教学から逸脱した近代日本ならではの言説的特徴とはどのようなものか、という点を重視して調査を進めた。
当初研究計画ではアジア太平洋戦争前後における道元のイメージを整理する予定であったが、まずは近年とみに充実している親鸞表象研究を踏まえた上で、より有効な調査視点を定めることが望ましいと判断し、方針を変更した。倉田百三『出家とその弟子』(1917年初刊)が広範に読まれたことを画期に、実存的悩みにとらわれる「人間」親鸞像、そして教義を超えた修養としての仏教文化が知識青年層に受け入れられたが、検討を進める中で野間宏における親鸞はもちろん、大西巨人における克己的思想家の色合いが強い道元イメージも、この延長線上に位置づけうる見通しが得られた。
また、戦時期の国策に呼応し仏教言説を通して青年に要求された思想・行動についても雑誌『青年仏徒』(1936-42年)から検討を始めた。中核的門徒向けのメディアではあるが、仏教が外来思想であることを逆手にとりアジア・太平洋島嶼の思想的統合可能性に援用し、青年の使命感を鼓舞する論理など、修養思想の戦時下的変質を看取できる。
これに関連する調査の中で、ブラジル日系移民コミュニティを対象とした仏教と日本文化の講演録(昭和14年に現地で出版、サン・パウロ日本総領事館旧蔵の表記あり)を古書で入手できた。在外日本人の教導に仏教言説がいかに用いられたかはもとより、この講演者の来訪を期にブラジルで能文化が活性化したことは、戦時下に称揚された武士道と、武士の芸能である能、そして仏教(特に禅宗)の近代における連動の表れともいえる。現在、これらの調査に基づく論文ないし研究発表を準備中である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

近代日本の仏教文化・仏教言説資料の収集や、武田泰淳の仏教関連言説を検討するための基礎資料の調達には一定の進展があったが、小説テクストとの相互参照を含めた十分な整理検討作業は予定よりも進捗が遅れており、成果の公表にまで達することができなかった。また、予定していた富士正晴に関する予備調査は、同人雑誌『三人』(1932-1942年)にみられる仏教関連言説のピックアップを行うことなどはできたものの、次の調査で解明すべき点の集約には至っておらず、引き続きの課題となった。

Strategy for Future Research Activity

初年度で見通しをつけた知識青年の修養思想としての仏教という側面をさらに詳しく調査検討し、大西巨人・野間宏・武田泰淳・富士正晴の具体的な著述の読解および相互比較に繋げていく。また新たに得られた観点を活かし、修養思想および知識青年の自己実現が1930年代後半以降、戦争への献身や対外拡張政策への呼応を深める方向へスライドしていく状況を、前述の四人の作家による小説がいかに捉えたかについても考察する。
また、大西巨人における道元受容のきっかけについては、作家旧蔵資料の調査の間に大西の祖先が曹洞宗を信仰する士族であったことを示唆する一次資料を発見した。この点に関する追加調査も行っていくつもりである。
今後の研究遂行においては、焦点の明確化と成果公表促進の目的で、大西巨人・野間宏の文学の対照を核とし、武田泰淳・富士正晴の仕事を補助線として活用するという優先順位を取る見込みである。

Causes of Carryover

別の共同研究での調査出張をまとまった日数を使って行うこととなったことや、予備調査に遅れが生じていたことを踏まえ、当初予定していた本研究課題での調査出張を延期することになった。また物品購入については、調査の進捗状況を鑑みて優先購入すべき電子機器や資料の再検討を行ったため、より有効に活用することを期して次年度使用分とした。
次年度使用分は、当該年度の助成金とあわせて物品(全集・研究叢書類・貴重雑誌の復刻版等を含む書籍、研究用機器、消耗品など)の購入、成果発表準備のための出張調査に要する交通費・資料複写費、遠隔複写サービス利用経費などに充当する予定である。

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Published: 2023-12-25  

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