2022 Fiscal Year Research-status Report
『名語記』による鎌倉時代の語彙研究および『名語記』の本文校訂
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22K20039
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Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
小林 雄一 京都先端科学大学, 教育開発センター, 講師 (00964553)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 古辞書 / 名語記 / 色葉字類抄 |
Outline of Annual Research Achievements |
鎌倉時代に成立した語源辞書『名語記』は、当時の言語を知る上で重要な資料であると評価されながら、辞書としての基礎的な研究が少なく、正確な本文が提供されていない状況が続いている。本研究では以下の二点を研究の目的とする。 ①『名語記』と『色葉字類抄』との語彙の対照による『名語記』掲載語彙研究の精緻化 ②前尾記念文庫蔵の紙焼き写真本『名語記』による翻刻の校訂および、巻七の釈文の提供 ①について、申請者は既に『名語記』が取り上げる語とその漢字表記とのペアの多くが『色葉字類抄』に見出されることを明らかにしている(小林2014「『名語記』と『色葉字類抄』」、小林2015「『名語記』と『色葉字類抄』続考」)。本研究では、そこからさらに『名語記』に漢字表記がない場合も含めて『色葉字類抄』と対照することで、『色葉字類抄』と『名語記』の掲載語彙がどの程度重なるのか、また、重ならない語はどのようなものなのか、といったことを分析していった。 この調査結果と分析を、第129回国語語彙史研究会(2022年9月、オンライン開催)において「『名語記』と『色葉字類抄』続々」と題して発表した(2022年9月)。また、雑誌『日本語学』に「『名語記』を読む」と題した論考を寄稿した(2023年6月発行予定)。これらの発表では、『名語記』が掲出語に対する漢字表記を示さない条についての調査結果と考察を行った。 ②については、現在出版されている翻刻に欠けている巻七の釈文を、まずは何らかの媒体で公表することを目指して、釈文の精度を高めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前項の①については、2022年度に研究発表を行うことができた。2023年度中に論文として投稿するために準備を進めており、こちらの目的については計画通り進めることができている。 前項の②については、巻七の釈文を公開することを優先して作業を進めているが、その他の巻(巻二~六、八~十)の校訂までは作業が進んでいない。現在出版されている翻刻は、原本の虫損箇所を補読した部分が多く、補読したということを示していないため、補読箇所も含めた校訂リストを作成するためには、当初の予想以上の作業が必要になる。そのような理由から、本文校訂の作業はやや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、前項で述べたように、研究内容を論文として投稿することを優先して行う。また、並行して、巻七の釈文の公開に向けて、釈文の精度を高めていく。翻刻の校訂については、全ての巻の校訂リストを作成することを目指す。
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Causes of Carryover |
出張を予定していた調査先は、平日に訪問する必要がある施設がほとんどであるが、年度の後半から採択されたため、大学の授業との兼ね合いから、出張する時間を確保することができなかった。2023年度は夏休みを利用して、調査のための出張を行いたい。 また、古辞書研究や、日本語学の基礎的な書籍、中世の文献の複写も予定していたが、年度の後半からの採択であったため、予定していた書籍すべてを購入することができなかった。購入できなかった分の書籍については、2023年度に支出したい。
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