2022 Fiscal Year Research-status Report
書物と権力の関係に注目した太閤記物散文作品群の体系化―近世前期から中期を中心に―
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22K20041
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
竹内 洪介 就実大学, 人文科学部, 講師 (60963139)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 太閤記物 / 太閤記 / 豊臣秀吉 / 小瀬甫庵 / 仮名草子 / 軍書 / 小牧・長久手の戦い / 近世文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、豊臣秀吉の伝記的資料である太閤記物散文作品群の諸書・諸本を収集し、権力者との関係に注目しつつ分類・整理して体系化することを目指すものである。具体的には、『天正軍記』『豊鑑』『豊臣秀吉譜』『川角太閤記』『太閤記』の五書を対象とする。 本年度は科研費交付処理の関係上、下半期のみの研究活動となった。特に『太閤記』の研究を中心とし、小瀬甫庵『太閤記』の構成意図を小牧・長久手の戦いに注目して同書と権力者との関係性を分析した成果を、2022年度日本近世文学会秋季大会(2022月11月6日)にて発表した(「『太閤記』の構成―小牧・長久手の戦いに関する検討を中心に―」)。さらに、本発表の一部を基として、堀新・井上泰至編『家康徹底解読』(文学通信、2023年2月)所収第九章「小牧・長久手の戦い 虚像編」を執筆した(この他、付録「家康関連作品目録(軍記・軍書・史書・実録・史論・図会・随筆・小説)」も併せて担当した)。また、本研究課題に関連した成果として、コラム「住吉大社にある『絵本太閤記』」(「住吉さんと太閤さん」第五回、住吉大社社報『住吉っさん』第39号、2022年12月)を提出した。 その他、『豊鑑』の著者・竹中重門自筆本の複写本と思われるものを調査し、分析した。また、現在『川角太閤記』の東京大学附属図書館南癸文庫本(江戸中期頃写本)と嘉永年間に出版された版本との比較・分析も進めている。さらに、『天正軍記』今年度は本研究課題予算を駆使した資料収集によるインプットに偏りがちであり、アウトプットが追い付いていない現状は反省すべき点と考えるが、そのインプットを生かし、今後鋭意成果として発表していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に明記した通り、今年度は下半期のみの活動となったことも影響し、研究対象であった『天正軍記』『豊鑑』『豊臣秀吉譜』『川角太閤記』『太閤記』の五書のうち、ほぼ『太閤記』に注力した研究を行ったにとどまっている。この『太閤記』の研究に関しても、日本近世文学会秋季大会での発表を踏まえ、賤ケ岳の戦いの分析を別に行う必要があるなど、踏むべきステップがいくつかあることも改めて判明・再確認したため、当初予定していた以上に課題を複数追加する必要がある。 ただし、【研究実績の概要】欄にも明記した通り、『豊鑑』『川角太閤記』については徐々に分析を進めている段階である。遅ればせながらアウトプットに注力し、課題の遂行に尽力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた研究課題に加え、下記の課題を追加して研究を進めていく。 調査・研究を進めた結果、豊臣秀吉の主要な伝記的資料だけでなく、たとえば賤ケ岳の戦いや山崎の戦いなど、秀吉が参加した主要ないくさの伝承に関する展開も併せて考察する必要があることが判明した。また、秀吉時代を舞台とする仮名草子の調査・分析も重要と考える。 またこれとは別に、オーストリアにおいて近世初期に秀吉について記された『著名武将列伝』と思われるものを見出した。その他、オーストリアおよびイタリア、および韓国・台湾に本研究課題を遂行するために役立つ秀吉伝の善本が複数残っており、調査して適宜紹介したい。すでに原稿依頼もあり、本研究期間中に成果を提出できる見込みである。
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Causes of Carryover |
事務処理上、予算の執行開始時期が2022年度後半に偏ってしまい、予算の執行がおくれてしまったことが主要な原因である。この事態は当然予想されるべきではあったが、予算執行に伴う事務作業が公務と重なり、予定していた以下の執行状況に収まってしまった。以上が次年度使用額が生じた理由である。 次年度はこの繰越金額を生かし、【今後の研究の推進方策】欄に記した通り、当初予定した課題の遂行に加え、研究上追加せざるを得なかった複数の課題を遂行するための出張費等にも利用する予定である。これらの追加課題を遂行することにより、当初予定していた課題が円滑に進むため、なにとぞお認めいただきたい。
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Research Products
(3 results)