2022 Fiscal Year Research-status Report
The Interpreter System in the Early Modern East Asian Region
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22K20049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
張 子康 京都大学, スーパーグローバルコース人文社会科学系ユニット, 特定助教 (70966283)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 近世東アジア / 通事 / 仲介者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世東アジアにおける清朝と各国との関係において、仲介者として機能した「通事」の制度的実態を解明し、その具体的な役割を検討するものである。具体的には、清朝と朝貢関係にあった琉球、朝鮮、ベトナム等各国の事例を分析する。初年度である本年度は、以下3点について研究を進めた。 第一に、従前より研究を進めていた清-琉球間の通事について、博士論文の一部としてまとめた。中琉関係の現場たる福州に所在した中国側通事と琉球側人員の交渉の実態を明らかにし、特に19世紀中葉以降、伝統的中琉関係の動揺に対応するにあたり、通事たちの働きの大きさを提示した。この後は、19世紀にとどまらず、清代中琉関係全般における通事の役割についてより広い検討を進める。 第二に、清-朝鮮間について、朝鮮側史料である各種『燕行録』の精読を進めている。清朝に派遣された朝鮮使節が付けた旅行記(日誌)である『燕行録』中には、朝鮮側・中国側双方の通事も数多く登場する。これら通事たちについて網羅的にデータベースを作成し、制度的枠組みを抽出する作業を行っている。 第三に、現地出張を伴うベトナム・東南アジア方面の資料収集を行った。本来、本研究の助成期間内ではベトナムの検討は計画していなかったが、研究を進めるにつれ、ベトナムの事例についても大枠を把握しておくこと、比較対象として東南アジアの域内秩序・国家間関係の在り方について知見を深めることが不可欠であると認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である①清-琉球間の研究のまとめと博士論文の提出、②清-朝鮮間史料の精読を進める2点については達成できている。しかし、内実については遅れ気味である。本研究の分析対象は膨大であり、改めて研究計画を精査し、優先順位を明確にしつつ研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画通り進める。次年度は清-朝鮮・清-西洋間の通事を主に扱う。 ①朝鮮については、清朝に派遣された朝鮮使節が付けた旅行記(日誌)である各種『燕行録』の読み込みを続け、朝清関係における清朝側の通事制度を再構築する。琉球にとっての福州のような、明確な一拠点を朝鮮は持たないが、朝清国境の鳳凰城、および北京自体が朝鮮側の拠点として機能したという仮定の下、両地の通事に特に着目する。 ②西洋については、広東通事の事例はよく知られているが、制度的位置付けは不十分である。琉球、朝鮮の事例と比較しながら、主要史料を再読していくことで、清朝全体の通事制度内に広東通事を位置づける。 本研究は中国、琉球、朝鮮、ベトナム、日本と、いずれも重厚な蓄積のある各国史を横断的に検討するものであり、完遂には10年単位の期間が必要となる。本助成期間内では、まずは近世東アジア地域全般に通用する通事制度の枠組みを見出し、その見取り図を構築することに焦点をあてる。
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Causes of Carryover |
本年度は、書籍等資料購入用に物品費を多く計上していた。研究代表者の専門外の分野について資料収集を行ったこともあり、本当に必要な資料の判断に時間がかかり、物品費の支出がやや遅れている。次年度使用額分は当初の計画通り資料収集に充てる。
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