2022 Fiscal Year Research-status Report
文化財科学的手法による奈良三彩胎土の特徴と分類に関する基礎的研究
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22K20068
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
小倉 頌子 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 技師 (50966273)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 奈良三彩 / 胎土分析 / 統計分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、奈良県内外の遺跡出土奈良三彩陶器を網羅的に分析し、その特徴から出土遺跡間での比較、分類を試みることにより、奈良三彩の生産、流通を考察する手がかりとするための基礎的研究である。本研究の目的は、奈良三彩の生産地を解明するための第一歩として、胎土を中心に自然科学分析による材質調査を行い、①個々の資料の特徴を明らかにすること、②①の結果と考古学的見解を併せて胎土の分類に有効な指標を明らかにすること、③奈良県内外の出土品を比較して有意差の有無を明らかにすることである。本研究では、蛍光X線分析などによる非破壊分析を行い、分析結果に器種や製作時期といった考古学的見解を加え、それらを元にクラスター分析などにより統計的な評価を行う。 初年度である本年は、分析データの蓄積および県外資料の調査・分析を中心に実施した。①②については、奈良県内遺跡の出土品について蛍光X線分析、顕微鏡観察を行いデータの蓄積を継続している。現時点で、平城京周辺(奈良市)と県中南部地域の遺跡では、胎土組成にやや差異が現れる可能性があることが分かった。これについては、今後慎重に検討を重ねていく。また、SPring-8における放射光を用いた微量重元素分析を行うにあたり、方法を検討し試料を選定している。③については、本年度は3県の奈良三彩を実見調査し、一部分析を実施した。なお、分析結果は学会にて報告した。引き続き調査・分析を行うとともに、分析結果をまとめ総合的に検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの蓄積を継続する中で、出土遺跡ごとに胎土組成が概ねまとまること、地域ごとに差異が現れる可能性が見られた。これが有意な差であるのか、また何によって生じる差であるのかといった課題はあるものの、一定の成果はあったと考えている。 また、次年度には、奈良県内遺跡出土品のうち、これまでに胎土分析およびクラスター分析による統計的分類において有意差が現れたものについて、SPring-8における微量含有元素の非破壊分析を予定している。県外遺跡出土品では、実見調査を行った3県のうち1県は、文化財科学会にて分析結果を報告済みである。あとの2県中1県は次年度中に分析の実施が確定している。 以上のことから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
分析データの蓄積はこれまで通り継続して行う。SPring-8での分析結果等も含め、最終的には統計的な分類を行う。また、複数の異なる分析装置を用いた場合に、分析結果にどの程度再現性を得られるか確認するための実験も予定している。
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Causes of Carryover |
当初、県外機関の関係者を招聘予定であったが、都合により実施できなかったため、次年度に行うこととした。
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