2023 Fiscal Year Research-status Report
大都市圏都心地区における新住民の日常生活を支える労働者の職住関係
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22K20080
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
石川 慶一郎 愛媛大学, 社会共創学部, 助教 (20965454)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 人口の都心回帰 / 通勤行動 / サービス業 / 食品小売業 / 東京 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の大都市では1990年代後半以降人口の都心回帰と呼ばれる都心地区の人口増加が続いている。都心地区では、多様な家族類型の世帯が増加しており、新住民に商品やサービスを提供する様々な産業が拡大している。本研究の目的は、そのような都心地区の新住民の日常生活を支える産業の立地および従業者の職住関係を分析し、人口の都心回帰が大都市圏在住者の日常生活に与える影響を検討することであった。 しかし、分析結果からは興味深い結果は得られなかった。そこで都心地区の従業者から居住者に視点を移し、その居住者特性と空間パターンを分析することにした。分析結果から、都心地区では住宅によって居住者特性が大きく異なること、そのパターンは都心地区の街区構造を反映して虫食い状のパターンを示すことが明らかになった。これらの結果はいずれも先行研究で指摘されてこなかった新たな知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)本研究の目的:本研究は都心地区の新住民の日常生活を支える産業の立地および従業者の職住関係を明らかにすることを通して、人口の都心回帰が大都市圏在住者の日常生活に与える影響を検討することを目的とする。→分析結果からは興味深い結果は得られなかった。そこで、研究目的を変更し、都心地区の従業者から居住者に視点を移し、その居住者特性と空間パターンを明らかにすることにした。 (2)本研究の学術的な特色、独創的な点:人口の都心回帰に関する従来の研究は、新自由主義的な行財政改革や不動産投資といったような政策や経済の領野への影響を検討してきたが、本研究は、人々の日常生活の領野への影響に焦点を当てる。→都心地区の居住者特性の空間パターンは従来の都市地理学研究で指摘されておらず、新たな知見を提示することができた。 (3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか:①都心地区で増加したサービス業・小売業の立地の分析→新住民の増加と産業立地との関係を十分に示すことができなかった。②都心地区で就業するグレーカラー層の居住地を含む基本属性の分析→興味深い結果が得られなかった。研究目的変更後もデータとして使用した。調査区ごとのミクロな集計・分析が可能であり、今後の利用可能性の高い有用なデータであることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
居住者の属性と移動の特徴について都心地区の状況は概ね明らかとなった。しかし、都心地区を取り囲む中心都市の状況は十分に明らかにされていない。東京圏を例にとれば、その中心都市である都区部の状況は都心3区とそれ以外の区で大きく異なることが予想される。都心地区と同様に中心都市も人口回復が生じた地域である。周辺区間の差異に注意しつつ、中心都市の居住者の属性や移動の特徴について明らかにする必要がある。 そこで、今年度はインターネット調査を実施し、中心都市の中でも増加の著しい若年単身者に着目し、その属性と移動の特徴を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究計画の変更により、2023年度に予定していた調査を実施できなかったため。2024年度にはインターネット調査を実施する予定であり、その利用料が予算使用の大部分を占める予定である。
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