2023 Fiscal Year Annual Research Report
役務提供者の団体行動及び団体交渉をめぐる競争法・労働法上の規律に関する比較法研究
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22K20087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石黒 駿 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 助教 (10876808)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 集団的労働関係法 / 競争法 / 米国法 / EU法 / ドイツ法 / フランス法 / 労働協約 / 経済的自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、第一に、ドイツ・フランス・米国における労働協約と競争法の関係をめぐる議論を中心に、文献研究を行った。 成果は次の通りである。EUにおける労働協約と競争法の関係は、事実上、各加盟国に委ねられる部分が大きい。そこで、ドイツとフランスをみると、いずれにおいても、労働協約制度のあり方を巡る議論の中で、競争法や競争の観点が援用されていた。他方で、米国では、競争法の適用の有無自体が、従来から意味を持っていた。そこでは、労働法上の適法性の評価とは別に、労働法上違法な行為も、競争法ではなく労働法に委ねるという選択肢が存在していた。 第二に、令和4年度の成果も踏まえて、EU・米国・日本における「労働法と競争法」の問題を横断的に検討した。 成果は次の通りである。この問題は、各法域における競争法と労働法の枠組みや労使関係のあり方によって、様々な形をとる。特に重要な要素は、競争法の枠組みの柔軟性(競争制限が個別に評価されるか、様々な公益が考慮されるか、事前手続を経ずに適用除外を受けられるか等)、競争法の公的・私的法執行の状況、労働法違反に対する特別の救済内容や救済機関の有無、競争法が追求する価値の遵守状況等である。これらを考慮して、労使関係への競争法の適用可能性があること自体が、望ましくない結果をもたらすと考えられる場合、労働に関わる一定の事項・行為・主体等につき、個別に当否を評価せず、一律に競争法の適用を否定するアプローチが選択される傾向にある。他方、そのような懸念がない場合、競争法の適用自体は肯定し、その枠内で、一定の行為が労働法上正当であることを踏まえて判断するアプローチが選択されやすい。 以上の成果は、2024年2月に助教論文として東京大学大学院法学政治学研究科へ提出し、3月に東京大学労働法判例研究会で報告した。加筆修正のうえ、2025年下旬以降、順次、公表する予定である。
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