2023 Fiscal Year Annual Research Report
Third Party's Duty of Justice in the Context of Grave Human Rights Violations
| Project/Area Number |
22K20093
|
|---|
| Research Institution | Kyoto University |
|---|
Principal Investigator |
服部 久美恵 京都大学, 地球環境学堂, 研究員 (50967734)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
| Keywords | 国際人権 / ビジネスと人権 / グローバル正義 / 救済責任 / 役割義務 / 第三者介入 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、重大な人権侵害状況に対する第三者の正義義務の理論的根拠を探究することである。この探究のために、国際人権論・グローバル正義論の議論蓄積を、組織的になされる重大な人権侵害への介入根拠の観点から批判的に検討し、その難点を克服する代案を探った。令和5年度では、過去半年間の成果を踏まえ、次の二つの研究作業を行った。
第一に、侵害後の救済の法哲学的根拠を検討するため、矯正的正義、修復的正義を中心とした文献調査を行い、第三者による救済的介入を支える規範的根拠として包括的なex postの正義原理の考察を進めた。また、原理的考察だけでなく、人権侵害の救済・補償を定める地域的・国際的な実定規範の調査を行い、特に国内法上の賠償の限界から進んだ規定を置く欧州人権条約を始め、世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約に含まれる補償と救済の射程に関し、ex postの正義原理との連続面と乖離面を確認した。さらに、個人に対する修復指針を提示する国際文書である犯罪および権力濫用の被害者のための正義に関する基本原則宣言の構造と成立経緯の確認作業を通じて、重大な人権侵害に対する可能な救済理念の検討を行った。
第二に、前年度に理論的考察を進めた公務員の義務論に対する潜在的批判を検討することで、理論の精緻化を図った。特に、公的行為には帰結主義的考慮を重視する説に対し、同意論の亜種である自発的役割義務の引き受けが説得力をもつ場面を特定し、正義義務から介入を正当化するアプローチを擁護した。
|
