2022 Fiscal Year Research-status Report
複合契約論の再構成:信頼・責任の観点からの日仏比較法研究序説
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22K20097
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
渡邊 貴 帝京大学, 法学部, 助教 (10963564)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 相互依存的契約の連鎖的消滅 / 失効構成 / 拡張構成 / 相互依存性・不可分性 / 間接目的 / 契約の類型・性質決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は交付申請書に記載した計画の通り、複合契約論との関係における契約相対効の原則の今日的意義の検討(総論的課題)、および契約の連鎖的消滅の法的構成の分析(各論的課題)という二つの課題について、フランス法との比較を行いながら考察を行った。 まず後者の、契約の連鎖的消滅の法的構成の問題については、「複合契約の解除の法的構成に関する序論的考察― フランスにおける相互依存的契約の連鎖的消滅の法的構成に関する議論を中心として ―」帝京法学36巻2号(2023年)掲載予定を公表することができた。同論文は、契約の連鎖的消滅の法律構成について「失効」という構成を選択したフランス実定法の議論を検討することを通して、連鎖的消滅の法律構成の問題を考える上での視点の析出を試みるものである。本論文での分析を通して、複合契約ないし相互依存関係を有する契約の連鎖的消滅を正当化する発想として、消滅が問題となる契約の内的要因に着目する発想と(失効構成)、契約が他の契約と一定の特別な関係を有していることを前提に、外的な影響を受けて消滅するとの発想(拡張構成)が存在しうることを明らかにできた。その上で、従前の我が国の議論においては、前者の方向性を示すものが多いと考えられる中で、後者の発想から連鎖的消滅を基礎づける方向性もありうるとの知見を得ることができた。 また、こうした契約の連鎖的消滅の法律構成の問題は、各論的な問題にすぎるものではなく、契約相対効の原則をどのようなものとして捉えるべきか、複合契約を構成する個々の契約を、古典的契約法理論が前提とする単一契約との関係でどのような意義を持つものとして理解すべきか、という契約法の総論的な問いを誘発するものでもある。そのため、同論文の執筆を通して得られたこうした問いや知見の存在は、上記の総論的課題に対する研究実績の一つとしても位置づけることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記載をした通り、本年度は研究課題につき比較法的分析を伴う論文を公表することができた。このことが、上記評価を行った主たる理由である。 また、研究会報告や論文の公表に至らないまでも、上記論文を執筆する過程で研究課題に関する今後の検討課題に気づくことができたり、内外の研究者と意見交換をする機会を得たことにより今後の研究の方向性を見定めることができたことも、上記評価を行う付随的な理由として挙げることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に公表に至った論文は、主としてフランス法の分析を行うものであったため、今後は、同論文の執筆を通じて得られた分析視角をもとに、日本法の議論についての検討を行っていくことを目標とする。それとともに、交付申請書に記載した研究計画のうち、後半の各論的課題、すなわち、DPF取引の民事法的問題についての分析も行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初2022年度においては、フランスへの海外出張を行い、文献収集や意見交換を行うことを計画していた。しかし、2023年度初頭に研究代表者が所属機関を移籍することとなり、その移籍の準備のため、海外出張を行うための期間を確保することができなかった。そのため、当初2022年度の海外出張旅費として計上した額を、次年度使用額として計上することとした。また、当初国内で対面で開催される見込みであった研究会等もオンライン開催となり、交通費の支出等に経費を割く必要性が減じたことも、次年度使用額が生じた理由である。 2023年度においては、まず海外出張(フランス)を行うことにより、次年度使用額を使用することを計画している。また、申請者の研究機関移籍に伴い、大都市(関東・関西)で行われる国内研究会への参加のための旅費も捻出する必要性が生じるものと考えられるため、こうした費用にも次年度使用額を充てることを計画している。
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