2023 Fiscal Year Annual Research Report
Plutocratic Influence on Budget Policy Making in Contemporary America
Project/Area Number |
22K20116
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
早崎 成都 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 助教 (40963749)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 再分配政治 / ロビーイング / アメリカ政治経済 / 財政政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は国立公文書館アーカイブス2に加え、ニクソン、フォード、カーターの各大統領図書館を訪問して史料を収集した。財界の基本的な選好は増税・規制に対する反対だが、税率を引き下げてもなお税収が増えるような状況下では、財界と政権の関係はさほど敵対的とはなりにくかったことに加えて、財界が財政政策に関して議会の投票行動に決定的な影響を与えることは難しいという状況があったように思える。こうした局面に変化が生じたのは、レーガン政権による大規模な減税提案であった。所得税の大幅な引き下げは財界からも財政赤字拡大の懸念が表明されたが、アメリカ経済の衰退を克服する手段として最終的に財界の支持を獲得しながら、この減税法案は成立する。ただし減税法案自体は議会で比較的大差で可決されたから、財界の動向が減税法案の可決を決定したとは言えない。1982年以降、レーガン政権が増税ないしは1981年に認めた加速度償却を目玉とする法人減税の縮小・廃止に舵を切ると、巨額な設備投資を行う産業から反発の声が上がった。一方、加速度償却の恩恵を受けず実効税率が高止まりしていた企業は、レーガンの転向をむしろ支持していくようになる。1986年の課税ベース拡大・税率引き下げを旨とする税制改革はそのような文脈で成立することになるが、ここでも法案は議会で比較的大差で可決されている。以上の経緯を鑑みるに、財界と富裕層の財政政策に対する影響力は、それぞれの時期ごとの文脈、業種や規模による政策選好の違い、政治的な党派等の要因を勘案して初めて理解できるものである。
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Research Products
(1 results)