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2022 Fiscal Year Research-status Report

EUにおける境界線をめぐる政治力学―象徴の構築・維持・変容に関する分析

Research Project

Project/Area Number 22K20121
Research InstitutionDoshisha University

Principal Investigator

佐竹 壮一郎  同志社大学, 法学部, 助教 (90962019)

Project Period (FY) 2022-08-31 – 2024-03-31
KeywordsEU / 欧州委員会 / 価値解釈
Outline of Annual Research Achievements

本年度はEUにおける価値に着目し、大きく2つの作業を実施した。第1に、EUとりわけ欧州委員会による価値構築過程の分析である。現在、EU条約では6つの価値が示されている(人の尊厳、自由、民主主義、平等、法の支配、マイノリティに属する人々の権利を含む人権の尊重)。本研究では、欧州委員会による年次報告書において、上記6つの価値がどのように使用されてきたのかに関する長期的傾向を分析した。分析を通じて2つの点が確認された。1つ目は、6つの価値が結びつけられる形で次第にパッケージ化され、それら価値の重要性が高まり続けている点である。ただし、6つの価値は常に同程度の関心を集めているわけではなく、EUの焦点は域内外の環境に併せて動いていた。2つ目は、普遍的な価値における解釈の広がりである。EU条約第2条に示されている価値はEU固有のものではない。だが、各価値を実現するための手段やそれぞれの価値が内包する要素はEUを取り巻く環境に左右されていた。価値の観点において、EUは単に統合か逆統合かという直線上に置かれているのではなく、多様な解釈を通じて構築されている。
第2に、EUにおける「揺らぎ」とアジェンダとしての価値構築をめぐる問題に関する分析である。2010年代にユーロ危機や難民危機を経験したEUは「揺らぎ」の中にあるとされたものの、誇張された側面も否定できない。先行研究ではポピュリストといった挑戦者の言説に焦点を当てて分析した一方、本研究は既存体制側、特に欧州委員会の言説に着目し、「揺らぎ」の原因を明らかにすることを目的とした。具体的には、2010年代に提示された「欧州の生活様式」アジェンダに関する動向について分析した。分析の結果、欧州委員会が自ら「われわれ」と「彼ら」の論理を構築したこと、および極右勢力にも応用可能な形式となり、結果として自身の「揺らぎ」を生じさせたことが明らかとなった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度は、上記の通り当該研究の主たる対象であるEUにおける価値解釈について、長期的な傾向、および最も動きが見られた2010年代の短期的動向から検討することができた。前者については日本EU学会2022年度研究大会で報告した。また、後者についても論文として掲載されることになっている。

Strategy for Future Research Activity

EUにおける価値や「欧州の生活様式」について検討を進める中で、欧州委員会が域内の境界線の意味をより広く解釈していることが浮かび上がってきた。それは、とりわけEU市民の解像度の向上という観点から確認できる。1990年代より、EU市民の声がEUに届いていないのではないかという懸念が高まっており、これに対応する形で欧州委員会は市民の直接参加の機会を設けていた。こうした交流の増加もあり、欧州委員会は自身がどういった者を相手にしているのかについて理解しようと試みている。
過去10年、欧州委員会はLGBTIQや子ども、反ユダヤ主義の撲滅に関する戦略をそれぞれ初めて公表した。これらの者が経験している「壁」を取り除いていくことに欧州委員会は注力している。こうした、かねてより存在していたものの、EUでは十分に関心を寄せられなかった「壁」について研究を進めていくことが求められている。まずはEUにおける子どもの位置づけに焦点を当てることで、子どもがEUにおいてどのような「壁」を経験し、EUがそれにどのように向き合っているのかについて検討する。この詳細は2023年度に開催されるグローバル・ガバナンス学会の研究大会で報告する予定である。

Causes of Carryover

計画時に想定していなかったこととして、研究代表者の所属大学の異動が挙げられる。海外での情報収集を予定していた時期に異動手続き・研究拠点の異動に追われ、結果として助成金を予定通り使用することができなかった。また、計画時に予定していた物品よりも価格が低いもので代替することが可能であったため、物品費も削減することができた。
他方、前任校で支給されていたパソコンについては返却する必要があった。また、着任校では支給に関する制度がないため、自身で用意することが求められる。こうした背景から、新たなパソコンの購入を予定している。

  • Research Products

    (3 results)

All 2023 2022

All Journal Article (1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] アジェンダとしての欧州の生活様式が抱える課題―EUの「揺らぎ」をめぐって2023

    • Author(s)
      佐竹壮一郎
    • Journal Title

      白鴎法学

      Volume: 第30巻1号 Pages: 39-62

  • [Presentation] 「欧州の生活様式」をめぐる2010年代以降の欧州委員会の動向2023

    • Author(s)
      佐竹壮一郎
    • Organizer
      国際政治統合研究会
  • [Presentation] EUにおける象徴としての「ヨーロッパ」とその多義性2022

    • Author(s)
      佐竹壮一郎
    • Organizer
      第43回日本EU学会研究大会

URL: 

Published: 2023-12-25  

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