2022 Fiscal Year Research-status Report
Empirical analysis of the effects of living conditions and temporary school closure on the cognitive and non-cognitive abilities of elementary school students
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22K20137
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
浅川 慎介 佐賀大学, 経済学部, 助教 (10962912)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 教育経済学 / 学力格差 / 生活状況 / 非認知能力 / 差の差の分析 / イベントスタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は本研究課題に関して、ディスカッションペーパーを1本作成した。
論文では、COVID-19による一斉休校が奈良市の小学4・5年生の認知・非認知能力に及ぼす長期的な影響、および休校中・休校明けの生活状況による休校の影響の違いを検証した。データは、奈良市で毎学期末行われている算数テスト「学びなら」に加えて、非認知能力(算数に対する児童の主体的な学習態度)を聞いた「児童アンケート」、休校中・休校明けの生活状況を聞いた「生活状況調査」を用いた。分析方法は、休校の経験のあるコホートと非経験のコホートを比較するため、イベントスタディ分析および差の差分析を用いた。分析の結果、学力については短期的には認知能力(算数テストの得点)が低下するが、対面授業再開から半年後の2学期末には、小学4・5年生ともに平均的に学力が元の水準に戻っていた。しかし、休校中・休校明けの生活環境が不利な生徒や小学4年生の児童の中には、休校から1年が経過しても学力が回復しない者もいた。非認知能力についても、休校を経験したコホートは非経験のコホートと比べて平均的に高くなっていたが、学力と同様に休校中・休校明けの生活状況が不利な場合は非認知能力も低下していた。さらに、生徒の休校前の算数の学力が低いほど、生活状況が生徒の認知能力や非認知能力に与える影響は大きいことがわかった。
上述の内容については、2022年秋の日本経済学会で口頭報告したほか、アジア太平洋研究所で口頭報告を行った。本論文は、現在Japanese Economic Reviewより再投稿が認められたため、論文を修正して再投稿を予定しており、本年中の公刊を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題について、2022年度はディスカッションペーパーを執筆し、学会・セミナー報告を経て国際学術雑誌に投稿、再投稿依頼を得た。2023年中には公刊が見込めるため、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はコロナ休校が認知能力と非認知能力に与える影響を、奈良市のテストデータ、児童アンケート、および生活状況調査を用いて分析した。しかしながら、休校中の生活や休校明けの学校生活などは個人や学校による差が大きく、どのような取り組みが認知能力や非認知能力の回復に効果的なのかが未解明である。
そのため、2023年度は主に小学生を対象にマスクやパーテションなどの存在が認知能力や非認知能力に与える影響を実験的環境で分析することで、2022年の研究内容で未解明の部分について明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナのために国外出張ができなかったことで、次年度使用額が発生した。本年度は、国内外の学会報告をするほか、論文公刊時のオープンアクセス費などで残額を全て使用する予定である。
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