2022 Fiscal Year Research-status Report
The Effect of Changes in Auditory Stimuli on Consumers' Choice of Environmentally Conscious Products.
Project/Area Number |
22K20139
|
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
芝田 有希 福井県立大学, 経済学部, 助教 (10960792)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | Sensory Marketing / Green Consumer / SCB / Construal Level Theory / エコ製品 / 持続可能な消費者行動 / 感覚マーケティング / 解釈レベル理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、環境にやさしい製品(以下、エコ製品)に対する注目が、企業と消費者の両方の文脈で高まっている。しかし、消費者はエコ製品に対して好意的な態度を示すにもかかわらず、実際の購買には繋がらないこと(すなわち「態度と行動のギャップ」)が大きな課題となっている。本研究はこの問題を解決するために、消費者の意思決定の大部分が行われる店舗環境の刺激(特に聴覚刺激)に着目し、エコ製品の選択を促進するために、適切な聴覚刺激の特定を目指す。また、「態度と行動のギャップ」が消費者の解釈レベル(対象との心理的距離によって解釈のされ方が異なる)によって説明できると考え、聴覚刺激がエコ製品の選択に与える影響の介在変数として、解釈レベルを導入する。 次に、本研究の研究実施計画と照らし合わせて、研究実績の概要について述べる。まず、本研究の根幹となる3つの領域(感覚刺激マーケティング研究、持続可能な消費者行動に関する研究、解釈レベル理論研究)に関する先行研究をレビューした。その後、本研究の研究枠組み、仮説、実験計画を設計した。また、その内容について研究部会にて報告を行った。先行研究のレビューおよび研究部会でのフィードバックの結果、本研究の目的を達成するために、聴覚刺激だけでなく視覚刺激が消費者のエコ製品に与える影響を検証する必要があることが示された。 そこで、聴覚刺激がエコ製品の選択に与える影響に関する調査の前段階として、視覚刺激(ex. 製品広告に関する文字情報)の影響を検証した。具体的には、広告メッセージの時間的距離(今年 vs 将来的に毎年)を変化させることで、消費者の解釈レベルを操作し、エコ製品の選択確率が変化することを検証した。データの収集はすでに完了しているが、データの分析および解釈については、今年度に実施する予定である。以上が、現時点に至るまでの研究実績の概要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況として、おおむね順調に進展していると考えている。その理由として、初年度に計画していた先行研究レビューが完了していること、そして、視覚刺激が消費者のエコ製品の選択に与える影響に関する調査が完了していることが挙げられる。 まず、先行研究のレビューについて述べる。本研究は感覚マーケティング研究、持続可能な消費者行動に関する研究、そして、解釈レベル理論研究に関する広範な先行研究をレビューした。先行研究を整理した後、本研究の研究枠組み、仮説、実験計画について、申請者が所属する研究部会(2023年2月)にて報告を行った。初年度に計画していたレビュー論文については現在執筆途中であり、2023年6~7月中に学術誌へ投稿する予定である。 次に、聴覚刺激が消費者のエコ製品の選択に与える影響に関する調査について述べる。当該調査については、初年度に実施できなかったが、代わりに視覚刺激(ex.製品広告に関する文字情報)が消費者のエコ製品の選択に与える影響に関する調査を実施した。具体的には、食器用洗剤(オーガニック洗剤 vs.一般的な洗剤)を選択アイテムとして、製品広告のメッセージを操作した(ex.賢明な選択をしないことで今年(vs.将来的に毎年)失われるものについて考えてください)。当該調査のデータ回収はすでに完了しているが、分析および解釈については、2023年5~6月に実施する予定である。 実験計画を変更した理由として、エコ製品の文脈では視覚刺激(ex. 文字情報)が消費者に与える影響が盛んに検証されており、またその影響が強固であることが挙げられる。そのため、第一段階として、視覚刺激がエコ製品の選択に与える影響について、解釈レベル理論によって説明できることを確かめ、その後、その影響が聴覚刺激でも複製可能であることを明示することが、本研究の知見を頑強なものにするために必要であると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画について以下①~④に分けて述べる。 ①レビュー論文の執筆:本研究の根幹となる先行研究(感覚マーケティング研究、持続可能な消費者行動に関する研究、解釈レベル理論研究)のレビューはすでに完了しているため、今後、感覚マーケティング研究と持続可能な消費者行動研究に関する包括的なレビュー論文を執筆し、学術雑誌に投稿する。 ②聴覚刺激(音楽の音高)が消費者のエコ製品の選択に与える影響の調査:聴覚刺激がエコ製品の選択に与える影響に関する調査を実施する前段階として、視覚刺激(ex. 製品広告に関する文字情報)がエコ製品の選択に与える影響に関する調査およびデータの回収が完了している。今後の研究では、回収したデータの分析および解釈を進め、本研究の研究枠組みと仮説(店舗環境刺激-解釈レベル-エコ製品の選択)が支持されることを確かめる。最終的に、聴覚刺激(音楽の音高)によって解釈レベルを操作した場合であっても、視覚刺激と同様にエコ製品の選択にポジティブな影響を与えることが可能であることを明らかにする。 ③聴覚刺激(音声広告)が消費者のエコ製品の選択に与える影響の調査:視覚刺激(広告内容)および聴覚刺激(音楽の音高)が消費者のエコ製品の選択に与える影響を検証したのち、聴覚刺激(音声広告)がエコ製品の選択に与える影響を検証する。具体的には、抽象的(vs 具体的)な内容に関する音声広告が、エコ製品の選択に与える影響を検証し、聴覚刺激ー解釈レベルーエコ製品の選択の関係性をより頑強なものとする。 ④本研究の成果をまとめた論文の執筆:最終的に、本研究の成果(先行研究レビューおよび3つの実験調査)をまとめて、学術雑誌に投稿する予定である。また、本研究の途中経過については、秋に開催される学会で報告を予定しており、それらのフィードバックを投稿論文に反映する予定である。
|
Causes of Carryover |
レビューするべき先行研究が広範であったため、回収したアンケート調査の分析が、初年度では間に合わなかったことが挙げられる。当初の予定通り統計ソフト(IBM SPSS Amos)の購入と、聴覚刺激がエコ製品の選択に与える影響に関するアンケート調査のために使用する。 研究費の使用計画についても、当初から大幅な変更はない。具体的には、レビュー論文を執筆するための国内外の関連書籍の購入、Adobeコンプリートプランのサブスクリプション契約、学会(計3回予定)と部会(計2回)に参加するための旅費、そして、聴覚刺激がエコ製品の選択に与える影響に関する追加の調査費用(計2回)に研究費を使用する予定である。
|