2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on Conflicts in Management Accounting Change with Institutional Theory as the Theoretical Basis
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22K20148
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Research Institution | Kaishi Professional University |
Principal Investigator |
明珍 儀隆 開志専門職大学, 事業創造学部, 准教授 (90966912)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 管理会計チェンジ / 制度論 / 制度ロジック / 制度的複雑性 / コンフリクト / 旧制度派経済学 / 新制度派社会学 / 制度的企業家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,制度論に基づく管理会計チェンジ研究に分類され,新たな管理会計システムがどのように導入,普及,変化,拒否されたかを,組織内の制度化プロセスの変化に基づいて明らかにする研究領域である。本研究の目的は,制度論に基づく制度ロジック(Institutional Logic),制度的複雑性(Institutional Complexity)に着目し,組織における制度変化プロセスおよび組織,組織成員,行為者間の組織コンフリクトに関するメカニズムを明らかにすることである。本研究は,2022年9月から2023年の1年6カ月の期間で実施する。 初年度にあたる2022年度は,主に制度論に関する諸概念の先行研究に基づき,組織コンフリクト解明のための予備的研究を実施した。旧制度派経済学,新制度社会学,制度的複雑性,制度ロジック等の制度論に関連する諸概念を先行研究レビューにおいて整理し,組織内外において生じるコンフリクトのメカニズムを解明するための分析モデルとして仮説フレームワークを検討した。 まず,旧制度派経済学および新制度派社会学における制度ロジック概念を組み合わせることにより,制度変化のプロセスを組織外部および内部の両面から分析できる可能性を示した。この手法を用いて,管理会計システムの導入前,導入初期,中期,後期の各工程において制度変化プロセスを補足することで,組織の制度変化を俯瞰的に捉える可能性を示した。 次に,制度的複雑性に関する先行研究に基づき,「実践主導型マルチレベル分析モデル」(Smets et al., 2012)および「組織内ロジック多様性モデル」(Besharov and Smith, 2014)との組み合わせにより,制度的複雑性の変化における経時的なコンフリクト評価モデルを仮説として示した。さらに,管理会計システムを導入した企業への参与観察およびインタビュー調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は,当初計画の通り,制度論に関連する諸概念の先行研究レビューを探索的に実施し,制度的複雑性概念の整理および諸概念に基づくコンフリクト評価のための分析フレームワーク(仮説)の検討を実施した。制度的複雑性に関する新制度派社会学および管理会計チェンジ研究における膨大な先行研究レビューを行い,今後の研究課題および今後の調査体系の整理を行い,管理会計システムが組織の制度変化をどのような影響を与えるかを明らかにする必要性を示した。 また,制度的複雑性によるコンフリクトのメカニズムを明かにするための分析フレームワークの検討においては,旧制度派経済学,新制度派社会学,制度ロジック,制度的複雑性の概念整理を行い,これらの概念に関わる広範囲な先行研究レビューを実施し,仮説としての分析フレームワークを示すことができた。さらに,制度変化において留意する必要性が認められた制度的企業家概念に関する文献レビューを行った。制度的企業家とは,社会システムのルールを作成,変更,解釈する能力を持つ個人または組織である(DiMaggio, 1988)。制度的企業家が制度変化へ与える影響に関する調査を行い,コンフリクトへの対応に関しての知見を蓄積した。制度的企業家概念に関する先行研究レビューは2023年度に研究論文として刊行予定である。これらの文献調査に加えて,金融サービス業および情報通信業に対する参与観察およびインタビュー調査を実施した。これは組織コンフリクトのメカニズムを解明するための質的研究に基づくものであり,2023年度においても継続的に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,過年度に実施した制度論に関連する諸概念の先行研究レビューによって仮説として示した分析フレームワークに基づき,組織コンフリクトの生成から変化の過程および帰結までのメカニズムを明らかにする。本研究では定性調査を用いることとし,参与観察および企業インタビューに基づく事例研究によって,管理会計システムの導入による組織の制度変化プロセスを明らかにする。これにより,管理会計システムを構成する会計情報や関連する構成要素が,どのように組織の制度的複雑性を生じさせ,コンフリクトや制度変化プロセスへ影響を与えてるかについて示していく。本研究の貢献は,多くの日本企業が抱える新たな管理会計システム導入における組織内外で生じるコンフリクト解消のための問題解決への道筋を示すことである。
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Causes of Carryover |
研究自体は当初計画に沿ってなされており、おおむね順調に進捗している。しかし,2023年度における研究指導および企業調査への参与観察およびインタビュー調査の実施に関して,当初の想定よりも多く行う必要が発生することが想定される。特に,2022年度の出張は研究指導および調査対象企業2社が東京であったため,新潟・東京の出張が主であったが,2023年度は,所属先のある新潟から,仙台,東京,名古屋,大阪への出張が見込まれ,さらに,海外大学への研究調査による出張を行う予定がある。このため,2023年度の出張回数が増加する可能性を想定し,研究経費の点で備えることにした。
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