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2022 Fiscal Year Research-status Report

信託財産の運用をめぐる比較文明史的研究の基盤構築に向けての試論:ワクフの事例

Research Project

Project/Area Number 22K20156
Research InstitutionHitotsubashi University

Principal Investigator

久保 亮輔  一橋大学, 大学院経済学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (20961957)

Project Period (FY) 2022-08-31 – 2024-03-31
Keywords経済史 / 寄進 / 信託財産 / ワクフ
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、経済現象としての寄進・信託行為とその背後にある法規範との関係性を15-16世紀エジプトの事例にそくして検討すること、そしてその特質を他の文明圏の類例と比較するための視座を打ち立てることである。この目的の実現のために、2022年度はまず、エジプトのワクフ(信託財産)の運用形態をめぐる法学者の議論を参照し、15-16世紀エジプトでワクフ経営の手法が多様化したことの意味を、ハナフィー派の古典学説と15-16世紀エジプトのハナフィー派法学者の見解の差異のなかに探った。その分析結果を、日本オリエント学会第64回大会の企画セッション「前近代イスラーム史料研究の新地平」にて報告し、ワクフをめぐる新たな契約形態や規定がエジプトの慣行をどの程度取り込んでいるかを明らかにすることが次なる課題であるとの展望を得た。そのさい、エジプトを拠点に活躍した法学者を時代ごとに検討する必要があるのはもちろんのこと、ワクフをめぐる規定のなかには中央アジアの学説をそのまま踏襲したと考えられるものもみられるため、学説相伝の態様も含め多角的に検討を進める必要があるだろう。
また、他の文明圏との比較にかんしては、中東・イスラム地域の低開発をイスラム法とのかかわりから説明するティムール・クランの「長い分岐」論を手掛かりとしつつ、ワクフを分析するための理論的枠組みと、それを歴史分析に適用するための方法論を探った。その成果は、論文「ワクフと経済発展:ティムール・クランの「長い分岐」論をめぐって」として『一橋経済学』(第13巻1号)に掲載された。
この他、イスタンブル・スレイマニエ図書館での史料調査を予定したが、渡航直前にトルコ南東部で発生した地震の影響により渡航を断念せざるを得なかった。2023年度に再度調査を予定したい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

イスタンブル・スレイマニエ図書館での史料調査を予定したが、渡航直前にトルコ南東部で発生した地震の影響により渡航を断念せざるを得なかった。史料調査ができなかったことによる研究の遅れはまず指摘しておかなければならない。しかしながら、『一橋経済学』に掲載された論文は、宗教・社団・市民社会をキーワードとし、統治と再分配のあり方を切り口として制度や組織、規範意識の相違をヨーロッパ都市を念頭に置きながら比較史的に検討している点で、本研究の目的に照らしても有意な成果と言える。これらの諸事情を総合的に勘案し、全体としてやや遅れていると判断する。

Strategy for Future Research Activity

2022年度の検討で明らかとなった以下の2つの課題に取り組む。①ワクフをめぐるエジプトの法学者の認識の変化を捉えるためにいくつかの時期を定点にとって法学書を検討すること。②中央アジアにおけるハナフィー派法学の展開とも関連づけながらエジプトの法学者の議論を検討すること。これらについては、刊行史料に依拠して進めることができる。
また、2022年度に実施できなかったイスタンブル・スレイマニエ図書館での史料調査を再度予定するとともに、法廷史料を分析するための準備も同時に進める。具体的には、法定記録を用いた既存の研究の問題点を把握するとともに、エジプト国立公文書館、首相府オスマン文書館で史料調査を実施し、必要に応じて取得・複写・書写する。
他の文明圏との比較(ヨーロッパ・日本など)を行うためには、各分野の研究動向を把握しておくことが重要となるが、これについては関連文献の調査と学会・研究会での交流をつうじて研究を進める。イスラム諸王朝においても、ワクフ経営のあり方は時代や地域によって大きく異なることから、文明間の比較にとどまらず、地域間比較を念頭に置いて研究を進めることも重要になってくるだろう。

Causes of Carryover

イスタンブル・スレイマニエ図書館での調査を予定したが、渡航直前にトルコ南東部で発生した地震の影響により渡航を断念せざるを得なかったため。2023年度に再度調査を予定する。また、海外から取り寄せを予定していた文献が年度内に納品されない見通しとなったため。2023年度に再度購入手続きを試みる。

Remarks

Web上で発表した記事
The Religious and Socio-economic Significance of Waqf Charitable Endowments
https://qalawun.aa-ken.jp/en/blog/20210525_530/

  • Research Products

    (3 results)

All 2022 Other

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] ワクフと経済発展 : ティムール・クランの「長い分岐」論をめぐって2022

    • Author(s)
      久保 亮輔
    • Journal Title

      一橋経済学

      Volume: 13 Pages: 5~34

    • DOI

      10.15057/74297

    • Open Access
  • [Presentation] 15-16世紀エジプトにおけるワクフ経営の多様化2022

    • Author(s)
      久保亮輔
    • Organizer
      日本オリエント学会第64回大会企画セッション「前近代イスラーム史料研究の新地平」
  • [Remarks] The Later Years of Qalawun Hospital

    • URL

      https://qalawun.aa-ken.jp/en/blog/20200511_211/

URL: 

Published: 2023-12-25  

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