2022 Fiscal Year Research-status Report
New Developments in Intermediation Theory: on side effects caused by innovation and efficiency improvements of intermediation technology
Project/Area Number |
22K20161
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 誠 京都大学, 経済研究所, 教授 (40899811)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 取引仲介の経済学 / プラットフォーム / ミドルマン / 評判 / 電子取引 / 市場の透明性 / サーチモデル / 檸檬の市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の取引仲介研究は、売手と買手をつなぐ仲介の効率性向上の効用が主な論点となっていたが、仲介技術の効率性向上がもたらす“必ずしも好まれざる副作用”については未知の領域である。こうした理論的に見過ごされていた論点を分析すべく、本研究では、仲介スキルを代替する評判メカニズム、プラットフォーム・モードという新たな仲介モード、コロナ禍に代表される販売制約という、新しい3要因を明示的に考慮したオリジナルの経済モデルを提示し、なぜこうした現象が起こるのか、それは経済学的にみて政策介入が必要なものなのか、もし必要だとしたらどのような政策が最適かを分析している。そして消費者保護の観点からみて、仲介ビジネスへの望ましい参入規制や、構造変化を加味した安定化政策、産業規制について新しい視点を提供する。 以上を目的として、二つのプロジェクトを立ち上げた。まず、プロジェクト1.「取引仲介の不安定性と仲介モード」において、仲介人の評判で支えられている市場は、一度信頼が損なわれると瞬く間に崩壊する傾向があることに着目している。評判メカニズムによる仲介市場の生成・消滅の原理を明らかにし、仲介モードの変革によって市場の不安定性が増す理論的可能性を示す。次にプロジェクト2.「情報過多やサーチ中毒を誘発する仲介市場」では、教科書的なロジックに従うと、市場の透明性は規制してでも確保すべきで、消費者のスムースな比較購買は市場の働きを支える良い要因だとされているが、サーチフリクションの下で情報過多やサーチ中毒が発生する原理を明らかにし、その政策的ケアを考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、プロジェクト1.「取引仲介の不安定性と仲介モード」において、基本的な理論モデルのセットアップとベースとなる分析の枠組みを構築した。より具体的には、評判メカニズムが判別スキルを代替するロジックを明らかにすることで、評判を立てやすいが壊れやすい経済(新興プラットフォームなど)や、その逆に、立てにくいけれど壊れにくい経済(伝統的商人など)の発生条件を導出した。この基本となるモデルを、いくつかのワークショップにおいて報告し、コメントを得た。プロジェクト2.「情報過多やサーチ中毒を誘発する仲介市場」では、新たな理論モデルを構築して、仲介技術の革新で生まれたより透明度の高い、販売制約の緩くサーチコストの低い市場では、低価格で質の高い財やサービスを求めて、過剰にサーチするよう誘導されていることを示した。すでに多くのワークショップ、カンファレンスにおいて報告し、今現在Journal of Economic Theoryで改訂を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に構築したモデルをさらに拡張して、政策分析を行う。消費者保護の観点からみて、仲介ビジネスへの望ましい参入規制や、産業の趨勢的な変化を加味した安定化政策、産業規制について新しい視点を提供することを目指す。データ解析などを行わない予定であるが、モデルによりタイトなエヴィデンスを模索する。海外での学会発表を視野に入れて最終的には投稿可能なバージョンを目指す。
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Causes of Carryover |
購入を予定していたパソコンおよびタブレットに新製品が出る予定であることが判明したため、アップデートした新製品を購入するよう変更したことで、当初予定していた2022年度の予算の一部を2023年度に使うことにした。
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