2023 Fiscal Year Annual Research Report
福島第一原発事故超長期避難における生活課題と支援に関する実証的研究
Project/Area Number |
22K20196
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
望月 美希 静岡大学, 情報学部, 講師 (50868007)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 福島第一原発事故 / 長期・広域避難 / ふるさと / 人と土地の関係 / 復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、原発事故後の「定住なき避難」の渦中にある超長期避難者が抱える問題とそれを支え合う関係性について、避難者/支援者双方の状況から検討し、原発事故がもたらした被害の全体像を捉えることを目的として、現地調査や資料収集を行った。具体的な研究課題として、①超長期避難者の生活課題と避難先コミュニティとの関係性、②避難元(=ふるさと)との断絶と再構築の状況、③避難の社会学の確立に向けた中範囲の理論構築の3点を検討課題とした。2023年度は、2022年度の研究調査結果についての1)論文執筆と学会大会での成果報告、2)今後の研究に向けた予備調査を中心的に行った。 1)に関しては、2022年度に行った浪江町の伝統産業である大堀相馬焼に関する論考(研究課題①②に関するもの)を執筆し、書籍を刊行した。また、研究課題③に関連して、避難をめぐる理論構築に向けて、マルクス、ルフェーブル、ブルデューなどの著作を読み解き、避難・移動の局面における居住地喪失の問題についての理論的整理、「人と土地の関係」についての試論を構築し、日本社会理論学会論文誌に寄稿した(2024.5時点で印刷中)。また、筆者が研究成果を蓄積してきた津波被災地と、本研究課題である福島原発事故に関する総合的な論考を進めるため、こでの成果の一部について、国際学会における英語報告を行った。 2)に関しては、福島県浪江町における2023年3月末の避難指示解除区域の拡大を受け今回帰還困難区域が一部解除された大堀地区について、現地調査および避難者へのインタビューを行った。調査から、大堀相馬焼の窯元たちが避難を継続しながらも、大堀地区に「通い」ながら、伝統産業拠点再生を試みつつある動向が明らかとなった。これにより今後、こうした拠点再生に向けた動向についての継続調査を行う必要性が示された。
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