2023 Fiscal Year Annual Research Report
集団的不平等を解消するための理論と技法の開発:非理想理論の社会学的検討
Project/Area Number |
22K20198
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
寺田 晋 長崎大学, 多文化社会学部, 助教 (30952650)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 非理想理論 / 関係的平等 / 認識的不正義 / アファーマティブ・アクション |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の多文化社会において多様な集団の間で望ましい関係を実現していくためには、集団間のあるべき関係を検討する規範理論と、集団の境界を越えて知識を共有する技法が求められるという前提のもとに、本研究は、政治哲学者J・ロールズが考案した理想理論(ideal theory)と非理想理論(non-ideal theory)という規範理論と、調査対象者とのコミュニケーションを重視する社会学の調査手法を分析し、現代の多文化社会に適した規範理論と知識共有の技法を開発することを目指した。具体的には、集団的不平等(group inequality)の問題を検討したE・アンダーソンの非理想理論を分析し、集団的不平等の解消策が採るべき方向性を検討してきた。とくに、本研究では、集団的不平等の認識上の課題として、知識の共有を阻む認識的不正義(epistemic injustice)の克服という課題に着目し、この課題を解決するための方法を検討してきた。 最終年度では、研究の前提となる政治哲学における非理想理論をめぐる議論を整理するために、文献を収集し、その内容の要約を作成した。とくに、本研究では非理想理論の実践として、独自の研究を開拓してきたアンダーソンの業績に着目し、彼女の政治哲学の体系的な理解を目指した。研究では、彼女の価値の表現理論や関係的平等主義という立場に分類される平等主義の主張のほか、その立場からみたアメリカ社会の分析、また、フェミニズム認識論の流れをくむ独自の認識論について検討を加えた。最終年度では、こうした検討の成果を論文としてまとめて発表した。また、認識的不正義に関しては分析の結果を論文にまとめ査読誌に投稿した。査読の結果を受けて、現在その内容を修正しているところである。
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