2022 Fiscal Year Research-status Report
外見差別とジェンダーに関する社会学的研究:見た目問題当事者の問題経験の検討から
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22K20201
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
吉村 さやか 日本大学, 文理学部, 助手 (80961606)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | ルッキズム / ジェンダー / 見た目問題 / 問題経験 / フィールドワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
生まれつきのあざや変形、色素欠乏や脱毛など、先天的・後天的な疾患や外傷によって外見が「ふつう」とは異なる人々(=見た目問題当事者)が存在する。本研究が焦点化しているのは、当事者の問題経験(=曖昧な生きづらさ)である。 先行研究で既に指摘されているように、国内において当事者の存在は、当事者自身による活動や運動によって可視化したが、運動に携わる「克服した」強い主体は極めて限られており、その多くは問題経験の語りづらさを抱えている。この点をふまえると、これまで収集されてきた当事者の「声」の多くは、活動や運動に携わるごく一部の当事者に限られており、当事者内部の多様性により着眼した調査・研究が行われる余地は、いまだ十分に残されている。本研究ではこの点に着眼し、当事者、当事者家族、支援者を対象とした調査を通して、当事者の問題経験の具体的内実と、それへのジェンダーの影響を実証的に明らかにすることを目的とする。 今年度(2022年度)は、プレ調査として、外見差別(lookism) 、当事者の問題経験(facial-disabilities) 、ジェンダー(gender)に関する国内外の既存研究を網羅的に収集し、内容分析を行うことを通して、これまでどのような知見が得られているのかを整理した。並行して、当事者の会でのフィールドワークを行い、調査協力者を募りながら、生活史の聞き取り調査を実施した。同時に、支援者への聞き取り調査を通して、具体的な支援策の内容と、それが実施される背景的な社会構造を社会学の視点から検討し、報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況は、当初の予定よりやや遅れている。主な理由は、新型コロナウィルス感染拡大の長引く影響を受け、当事者コミュニティでのフィールドワーク、ならびに聞き取り調査の実施が困難になったことがある。新型コロナウィルスの流行以降、当事者の会の活動に実際に足を運ぶ人数は激減し、いまだ回復していない状況が続いており、新規調査協力者との接触困難も、調査に遅れが生じた要因のひとつである。 その一方で、オンライン(Zoom)を活用した聞き取り調査は順調に進んだ。またフィールドワークとは別に、国内外の既存研究を網羅的に収集し、内容分析を行うプレ調査を重点的に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染状況を見極めながら、今年度同様、来年度も、対面、オンラインを並行しつつ、当事者コミュニティでのフィールドワークを行う。新規調査協力者を探索的に探しながら、これまでの調査協力者に対しても、必要に応じて、聞き取り調査を実施する。 また、今年度の調査結果をふまえ、来年度は質問紙調査票を作成する。作成した調査票は、各当事者の会の運営組織の協力を得ながら、当事者とその家族に配布し、実態調査を実施する。調査結果は、日本語、英語の報告書にまとめ、当事者の会にも配布し、研究成果をフィードバックする。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた主な理由は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、出張旅費が発生しなかったためである。 その分の使用計画としては、昨年度見送った調査出張の実施を予定している。
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