2023 Fiscal Year Annual Research Report
Students' Emotional Changes and Their Impact on Learning in Learning History Controversial Issues
Project/Area Number |
22K20239
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
星 瑞希 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (90966508)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 感情 / 困難な歴史 / 歴史教育 / 歴史論争問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
「困難な歴史」を学習する際の学習者の感情に着目した研究のレビューを行った結果、①精神分析アプローチ、②(批判的)社会文化的アプローチの2つのスタンスがあることを明らかにした。前者は「困難な歴史」を学ぶ学習者と過去の主観的な関係に焦点化し、後者は「困難な歴史」が学ばれる社会文化的なナラティブや文脈、学習者のアイデンティティに焦点化している。 前者に立つ研究として、Miles(2019)はカナダにおいて中学生が先住民寄宿舎学校の写真を見た際にいかに感情的な反応をし、学習に影響を与えのかを明らかにした。Milesは生徒たちが過去の苦しみを身近な事例へ置き換えて理解したことで、寄宿舎学校の生徒の苦しみが大きな植民地構造といかに結びついているのかを理解することができなかったことを指摘する。後者に立つ研究として、Zembylas(2015)は紛争状態にあるキプロスにおいて、対立するコミュニティの感情がいかに学校内外で形成されたり、発露したりするのかをエスノグラフィーによって明らかにした。 筆者は②社会文化的アプローチにたち、日本において「困難な歴史」を学習する際の学習者の感情がいかに社会文化的に構築されているかを明らかにした。首都圏の高校において日本の朝鮮半島の植民地化を扱った授業では不快な感情を吐露する生徒が散見された。彼らの不快な感情は「日本は犠牲者であると思っていたため、加害行為には驚いた」といった犠牲者意識ナショナリズムを帯びたものであった。そうした感情は授業外のメディアやSNSで形成されていることが垣間見えた。北海道の学校において、開拓とアイヌを扱った授業では、アイヌに対して感情が昂りケアしようとする生徒がいる一方で、全く感情が湧かない生徒の共通点として現代のアイヌを認識しておらず、アイヌを過去のものと捉えていることを明らかにした。
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