2022 Fiscal Year Research-status Report
The expertise and gender gaps of elementary school teacher and education welfare in England in the early 20th century
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22K20252
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
小澤 由理 共立女子大学, 家政学部, 助教 (20961973)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 就学支援 / ジェンダー / イギリス / 教職の専門性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は20世紀初頭イギリスの小学校での貧困児童や病児への公的な就学支援の業務(給食や衣服、医療サービスの提供等)に関わった教員の実態を追求するため、ロンドンにて2023年2月~3月に研究テーマに関連する一次史料の収集に従事した。まずロンドン・メトロポリタン・アーカイブスにて、1910年代~1930年代のロンドン教育当局における中央諮問校長委員会の議事録を調査した。本委員会は各地区の校長たちがロンドン教育当局に対して、教育現場に生じている様々な問題について協議を行うために設置されたものである。調査の段階では、女性校長会のほうが男性校長会よりも、より多くの、そして様々な議題をあげていたことがわかった。よって本調査で集めている議事録は、本調査の目的である当時の教育現場において男性と女性の教員が抱えていた課題の違いを明らかにするには十分な史料価値があると判断している。 次に、就学支援に関わった福祉専門職者を調査するために、ウェストミンスター・アーカイブスに保管された慈善団体(Westmister Children’s Society)の議事録や専門職者養成コースに関する資料を集めた。本慈善団体は、ウェストミンスター地区の貧困学校で医療的ケアに従事した福祉専門職者(ヴォランタリー・ワーカー)の養成や派遣を行った団体である。今後は福祉専門職者による支援の目的や専門性の内容を追及するとともに、学校教員との連携の在り方をジェンダーの視点から明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年2月~3月までロンドン・メトロポリタン・アーカイブスとウェストミンスター・アーカイブス・センターにて史料調査を実施し、解読と分析を進めている。滞在期間中に入手できなかった資料についても、当アーカイブスとコンタクトを取るなど積極的に史料の収集を行っている。現在、男性校長会の議事録については概ねの解読と分析は終了しつつあるが、女性校長会の議事録の議題の内容の分量が多いため、その解読と分析には時間を要している。なお調査の過程において、当委員会は1920年代以降にロに改組されたことがわかった。1920年代以降の委員会の議事としてどのように引き継がれたかということも視野に入れながら、史料の解読と分析を行っている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、調査中の史料の内容を整理して、1910年代に就学支援を行った校長がどのような課題を抱えていたのかを分析する。その上で、どのような理由で男性校長会と女性校長会の議題の内容の分量に差があるのか、ジェンダー的視点からの整理を行う予定である。またウェストミンスター地区にて、就学支援に従事する福祉専門職者の派遣と養成を行った慈善団体については、いくつかの就学支援のケース報告や、福祉専門職者の養成コースの詳細を記した議事録が見つかった。今後はこれらの史料の解読と分析を行い、学校教員と福祉専門職者の連携の在り方について追及する予定である。 なお本調査の過程で、女性校長会で活発に活躍した女性教員について特定することができている。特に幼児学校の女性教員の活躍が目覚ましく、議事録での発言者にはその後、女性教員の社会的な活動や地位の向上に大きく貢献した人物が散見された。これは当時の新潮流である新教育運動が幼児教育運動の進展に深く結びついていたことと筆者は推測する。今後はそのような幼児学校の女性教員のバックグランドや社会活動等にも注目しながら、当時の女性教員たちが教職をどのように意識していたのかを研究する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度7月24日から25日にオンライン開催される国際教育史学会44に参加し、研究の一部を報告する予定である。すでに報告要旨については審査を通過したため、次年度において学会参加費として140ユーロ(約20,742円)の支払いが必要となっている。またロンドンメトロポリタンアーカイブスに保管される史料のデジタルコピー代には多額の支払いが必要なため充当する必要がある。次年度では1100ポンド(約186,834円)の支払いが必要な状況となっている。
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