2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of STEAM teaching materials for understanding volcano disaster prevention systems
Project/Area Number |
22K20261
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
佐藤 真太郎 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 講師 (20869317)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 火山活動 / STEAM教育 / 防災教育 / 「生きる力」の育成 / プログラミング教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小学校第6学年児童を対象に、火山防災システムを理解するためのSTEAM教育教材を開発し、教育的効果を検討することを研究の目的とした。STEAM教育とは、Science(理科、科学)、Technology(工学)の最先端分野にEngineering(技術)、Arts(リベラルアーツ)、Mathematics(算数、数学)が加わった総合的な理工教育である。 はじめに基礎研究として、近年の理科教育における火山活動取扱いの現状と課題を明らかにした。その結果、火山はカリキュラム・マネジメントの視点から取り扱う具体的な教育内容となることを示した。さらに、STEAM教育における文理融合的な視点から、教材として火山活動を取扱うことは、義務教育段階から「生きる力」の育成に貢献可能であることを示した。 次に、火山について、カリキュラム・マネジメントの視点から具体的な教育内容を示した。Technologyについては、火山観測について取り扱う。地震計による火山体及び周辺で発生する火山性地震や火山性微動で捉える「震動観測」、地盤の傾斜変化等を捉える「地殻変動観測」、地中温度の観測など、「熱観測」について学習する。Mathematicでは、火山観測データを読み取る活動を行う。Scienceでは、火山性地震や火山性微動についても理解する。その上で、Engineeringとして、ARTsの要素を踏まえ、プログラミング教材「MESH」を活用して、火山噴火実験モデル上に、火山噴火からの被害を減らすための火山観測機器を設置し、プログラミングを行う授業を計画した。 本研究により、明治以降、理科では火成岩の主な種類や性質など、自然の事物・現象面を中心に取り扱われてきたが、近年発生した火山噴火からの教訓を踏まえ、理科で学習する火山の内容を再構築し、火山防災と連動した新たな教育内容・方法の創出が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初福島県磐梯山の1888年(明治21年)噴火を題材にしようと考えていた。しかしながら、福島県磐梯山に比べ、伊豆大島火山や富士山の方が、過去の噴火履歴から、今後の噴火の傾向を比較的捉えやすいなどの観点から、本研究での授業実践として取り組みやすいことなどを考慮して、授業実践を伊豆大島の小学校と山梨県の小学校に変更した。 一方、伊豆大島では伊豆大島ジオパーク推進委員会の協力により、気象庁など火山防災に関わる様々な関係機関が連携し、授業を実践できる環境が構築された。また、伊豆大島に位置する小学校第6学年の児童を対象とした授業実践を行うことが出来ることになった。さらに、山梨県では、富士山研究所の協力により、セミナーを開催し、火山研究者を交えて、教材について検討する機会を得られた。さらに、山梨県内の小学校第6学年児童を対象に授業実践を行うことも出来るようになった。 したがって、当初の予定とは授業実践を行う場所を変更したが、本研究の、国内の体系的な防災・減災教育の構築を目指した、持続可能な社会を実現する防災・減災システムを理解するためのSTEAM教材開発を行うという目的を実現する上で、授業実践の場を伊豆大島と富士山に変更して、様々な関係機関と連携・協力が可能となった現在の状況は、研究目的を達成するための方法としてより良い改善と考えられ、その点からも研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、カリキュラム・マネジメントを踏まえた授業計画の基、開発した教材を活用した授業実践を行い、その教育的効果の検討を行う。 令和5年5月、Japan Geoscience Union Meeting2023に参加し、現在及び今後の火山防災教育に関わる研究の動向を確認する。 次に、令和5年6月に富士山研究所でセミナーを開催し、開発した教材について火山研究者からも意見や指摘をいただく。また、令和5年9月に開催される日本理科教育学会全国大会で研究内容について発表を行う。これらの指摘やいただいた意見を踏まえて、小学校第6学年児童を対象に、火山防災システムを理解するためのSTEAM教育教材を完成させる。 令和5年8月~10月、山梨県と伊豆大島で、授業実践する学校との打ち合わせを実施する。この時に、授業実践について詳細に説明する。また、児童・保護者への説明、情報の開示、個人情報の取扱いについても説明する。 そして、令和5年11月に山梨県内の小学校第6学年児童を対象に、授業実践を行い、開発した教材を活用した授業の教育的効果を検討する。さらに、伊豆大島においても令和5年11月頃に授業実践を行い、その教育的効果を検討する予定である。研究の方法としては、iPADとICレコーダーで、教材を活用した授業実施時の児童の様子を記録する。記録した音声を文字で起こしたデータを基にして分析を行う。 最後に、研究のまとめを行う。研究の成果として日本理科教育学会の学会誌「理科教育学研究」において研究の成果を報告する。
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Causes of Carryover |
R4年度は、主に現在の理科教育における火山防災教育の現状と課題を理解するなどの基礎研究とそれを基にした、火山防災に関わるSTEAM教材開発を中心に取組んだ。ここでは、基礎研究に必要な資料代や研究のための旅費が必要であった。また、MESHなど、教材を開発するために必要な開発費が必要であった。そのため、授業実践校と打ち合わせを行ったり、実際に授業実践を行ったりするのは、令和5年度に行うこととなった。さらに教材がいくつ必要であるかなどは、授業を実践する児童数に起因するため、授業実践に必要なiPADや三脚などを複数購入するのは、授業実践を行う人数が決定する令和5年度に行うことにした。したがって、次年度使用額が生じることとなった。
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Remarks |
OECDラーニングコンパスと理科教育における自然災害取扱いの繋がりを検討した。そして、自然災害に関する教育は、OECD Learning Compassが示す学びの枠組みの中で、安全教育の目標を達成する可能性があることを示した。また、学生の主体性という概念や「緊張やジレンマを調整する」という能力は、VUCA時代に必要な資質・能力であり、科学教育を通じて育まれることが期待できることを示した。
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