2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of STEAM teaching materials for understanding volcano disaster prevention systems
Project/Area Number |
22K20261
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
佐藤 真太郎 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 講師 (20869317)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 火山防災教育 / STEAM教育 / プログラミング教育 / 理科教育 / 火山観測機器 / 持続可能な開発目標(SDGs) / 持続可能な開発のための教育(ESD) / 「生きる力」の育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,火山災害について,現象の特性を踏まえ,災害に至る自然の事物・現象のメカニズムと,それに対応した持続可能な社会を可能にする防災・減災システムを理解するためのSTEAM教材を開発し,授業実践を踏まえて教育的効果を検討することが目的である。 そのために,まず,VUCA(ブーカ)の時代に「生きる力」の育成を考え,明治以降,従来の理科教育で,火成岩の種類や性質など,自然の事物・現象面を中心とした取扱いに留められてきた火山に関する学習内容,方法等を今日的な教育現場の現状や動向から検討した。その結果,火山を取扱った教育は,現代的な諸課題に関する教科等を横断的に学べる教育内容として,カリキュラム・マネジメントの視点から取扱う具体的な教育内容となる。同時にSTEAM教育における文理融合的な視点から,教材として火山活動を取扱うことは,VUCAの時代,義務教育段階から「生きる力」の育成に貢献可能であることなどを示した。研究成果は,日本理科教育学会の学会誌「理科教育学研究」65-1号で掲載が予定されている。 次に,伊豆諸島北部に位置する伊豆大島の第6学年児童を対象に,火山防災に関わるSTEAM教育プログラムの下,火山噴火現象を踏まえた火山観測機器を理解するプログラミング教材を開発,実践した。そして,ポップコーンの噴出で火山噴火を表現した噴火モデル上に,振動や温度を感知するMESHブロックを用いた火山観測機器を設置し,噴出前の震動や温度の変化,ポップコーンの噴出を感知するプログラミング教育を行い,その教育的効果を検討した。その結果,学習者が,火山の特徴に関連した知識と,火山観測機器についての知識を結び付けて考えることができることなどを示した。この研究成果は,日本地学教育学会第77回全国大会で発表するなどし,多くの学校教育関係者,火山防災関係者に,今後求められる火山防災教育の在り方を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,福島県磐梯山の1888年(明治21年)噴火で,長坂集落の住民が,集落の西側で発生した噴火により,東側の長瀬川方面に避難し,岩屑なだれにより命を落とした状況を題材とした学習計画の下,STEAM教育教材の開発を行う予定であったが,題材とした火山を伊豆大島の三原山に変更した。その理由は,地震計等の火山観測機器が設置され,24時間体制で常時観測・監視している50の常時観測火山の中でも数多くの噴火記録が残されているため,児童に提供できる資料も豊富であり,学校教材として適していると判断したからである。また,防災教育に係る取組は,地域の災害リスクや災害の種類に応じた教育の実施が求められている。そのため,将来,噴火の可能性が考えられる活火山を有する,東京都大島町では,火山噴火の防災に関連した学習内容に,重点的に取組む必要が考えられることから,伊豆大島に住む小学校第6学年児童を対象として実施する方が,研究の目的に沿うと考えたからである。 本研究で行った,火山観測機器の理解を目指したSTEAM教育教材としての,火山防災教育におけるプログラミング教材の活用は,まず,教材の開発について,日本地学教育学会第77回全国大会(2023年8月25日)で発表した。この研究内容については,気象庁地震火山部談話会(2023年12月1日)及び富士山科学研究所火山セミナー(2023年6月9日)などで,火山防災に関わる研究者と様々な協議を行い,研究に有益な様々な意見を頂戴した。そして,2023年10月初旬~中旬に,伊豆大島内の小学校第6学年児童17名を対象として,計8時間で,火山観測機器の理解を目指したSTEAM教育の授業計画の下,火山防災教育におけるプログラミング教育を実施した。その研究成果について,2024年5月26日に,日本地球惑星科学連合(Japan Geoscience Union)で発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,「火山防災教育におけるプログラミング教材の開発と実践 -火山観測機器の理解を目指したSTEAM教育による教育的効果の検討-(招待講演)」と題し,2024年5月26日に,日本地球惑星科学連合(Japan Geoscience Union)で発表を行う。 それ以降は,研究の成果等について積極的に公開していくと共に,小・中連携を意識し,伊豆大島のジオパーク推進委員会,気象庁,火山博物館,そして,小・中学校の先生方と連携をとり,伊豆大島の小学校での火山防災教育が持続的に行うことができるようなプログラムの開発を行っていく。さらに,伊豆大島以外でも,火山防災教育を重点的に行うことが求められる場所がある。本研究の成果を様々な地域で活用できるように検討を重ねていく。
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Causes of Carryover |
研究に関連した授業を実践した伊豆大島内の小学校の予定を考慮し,授業実践が2023年10月中旬から下旬となった。したがって,授業実践後に,研究の結果を整理し,分析を行ったため,授業実践の教育実践の意義を検討した内容の研究発表を2023年度内に行うことが出来なかった。そのため,次年度使用額が生じた。 この研究成果の学会発表が2024年5月26日に,日本地球惑星科学連合(Japan Geoscience Union)で行うことになり,さらに,研究内容の報告を,日本理科教育学会の学会誌「理科教育学研究」で報告する予定であるが,現在,査読審査中の為,次年度に予算を使用する必要がある。また,本研究で作成した教材を使用した授業を,今後も継続的に伊豆大島の小学校で実施するため,教材の整備等でも費用が必要である。
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