2022 Fiscal Year Research-status Report
基礎看護学教育における患者安全の基盤となるリスクセンスの検討
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22K20262
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Research Institution | Morinomiya University of Medical Sciences |
Principal Investigator |
下岡 ちえ 森ノ宮医療大学, 看護学部, 准教授 (30367586)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | リスクセンス / 患者の安全 / 臨地実習 / 看護学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
看護学生の実習での看護行為を分析し、患者の安全の視点から問題に気づくというリスクセンスを育成することを目的としている。2022年度は、医学中央雑誌Webを用いて文献を検索した。リスクセンスでは文献が少ないことから、「医療安全」の下位概念となる「患者の安全/TH」と「看護学生/TH」による文献をかけ合わせて検索した。その結果、学生が危険と感じた場面および実際の経験では、「転倒・転落」「移乗・移送」が多いことが明らかとなった(小林,2020:仲下・河野,2016)。さらに、過去5年間の基礎看護学実習Ⅱにおける学生のインシデント・アクシデントを分析したMikiko H.et al(2016)は、移乗の場面が多いことの理由に、学生自身が危険を予測する能力の不足を指摘していた。これらの結果を得て、インタビューをするための質問項目を検討した。主な内容は①「ヒヤッ」としたり「ハッ」としたりした場面の発生状況、②患者に実施していた援助項目、③患者の状態である。 経験型実習教育の重要性を提唱している安酸(2015)は、学生の実習中の直接的経験の意味を深化させることが学びを深めると述べている。これにより、インタビューを実施する際の教師としてのかかわりの注意点を検討した。主な方法は、直接的経験の意味を探求し、反省的経験に深化させていくプロセスに教師が対話を通して関わることである。 以上より、看護学生の実習での「ヒヤッ」としたり「ハッ」としたりした場面の看護行為を分析することは、患者の安全を守ることのみならず、学生に対してもその意味を深化させることへつながるため、意義があるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
学生の「ヒヤッ」としたり「ハッ」としたりした場面を①発生状況、②援助項目、③患者の状態などをもとに、その過程が明らかになるようなインタビューにする予定である。当初の計画としては、2022年度末に募集する予定であったが、コロナにおける出席停止となった学生のために追実習を行った。そのため、追実習期間の3月末に成績入力を遅らせることとなった。倫理的配慮により、成績には影響しない時期に開始する条件としているため、2023年度に説明する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
看護学生の実習での看護行為を分析し、患者の安全の視点から問題に気づくというリスクセンスの要素を抽出するために、臨地での実習において学生が「ヒヤッ」としたり「ハッ」としたりした場面の発生状況・発生過程を収集する。対象者は臨地での実習で患者に看護行為を提供した学生20名である。方法はインタビューを実施する。なお、本研究は、研究者所属の倫理委員会より承認を得ている(承認番号2022-120)。以下に具体的内容を示す。 1)学生へのインタビューを実施する。(1)質問項目を用いて、臨地での実習(患者を受け持つ)において学生の「ヒヤッ」としたり「ハッ」としたりした場面の発生過程を収集して、記述する。(2)インタビューの際には、質問項目として①「ヒヤッ」としたり「ハッ」としたりした場面の発生状況(場所、時間、実習受け持ち日数・日時、登場人物、人的なものも含め詳細な環境を図示)、②援助項目(環境整備、更衣・清潔、栄養、排泄、姿勢・体位、測定、罨法、感染予防、与薬、吸入、吸引、洗浄、その他)、③患者の状態(年代、性別、主な疾患、日常生活動作レベル、装着医療器具)などを記述する。(3)これらの発生状況・発生過程を登場人物を含めて詳細に聞き取る。 2)学生へのインタビューにより収集した発生状況・発生過程を逐語録におこし、内容を分析する。(1)出来事の流れ図を作成する。(2)Root Cause Analysis(根本原因分析)を活用し、システム要因・ヒューマンファクター・環境要因の3側面から分析する。(3)根本原因へたどり着いたら、それらの要素を抽出する。(4)要素を類似した内容でまとめる。 3)分析により抽出された要素および類似した内容についてその妥当性を専門家と共に確認する。 4)まとめおよび成果の公表では、抽出された要素をもとに共通項をまとめて、対策方法を考察し、学生の教育へ活かす。
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Causes of Carryover |
・ワ-プロ、表計算・プレゼンテーション作成用アプリケーションソフトウェアを購入予定であったが、大学にて使用するため共用のOfficeを用いることとした(約4万円)。これに関しては、インタビュー内容を逐語録にする際の費用へとあてる予定である。 ・購入予定の本が、在庫としてなかったため、2023年度購入予定である。
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