2022 Fiscal Year Research-status Report
保証すべき高等教育の質とは何か:イギリスの新大学における「こども学」教育の分析
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22K20286
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
山田 寛之 立教大学, 立教サービスラーニングセンター, 教育研究コーディネーター (40963195)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 高等教育の質保証 / イギリス / 「こども学」 / 新大学 / 旧ポリテクニク大学 / プログラム詳述書 / 分野別参照基準 / 高等教育質保証マニュアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、保証すべき高等教育の質とは何かという課題を、イギリスの新大学の「こども学」を事例として検討するものである。具体的には、①高等教育の質を、教育分野ごとの系統的な知識と捉える「知識論」、②大学の質保証制度などの、教育政策や制度の影響を分析する「制度論」、③教育分野ごとの知識のまとまりを「こども学」という教育分野の「事例研究」を行う。なお、①に関する理論的課題についての研究の一部はすでに公表済みである(山田, 2022)。 2022年度は、「制度論」(「プログラム詳述書」「分野別参照基準」「質保証マニュアル」の分析)を、日本職業教育学会 第71回関東地区部会(2023年2月18日)において、「イギリスにおける高等教育段階の職業教育の質保証制度:新大学の「こども学」教育の事例」として発表することができた。 また、「事例研究」(Hordern、Campbell-Barrの著書の分析)を、日本職業教育学会第3回大会(2022年10月16日)において「イギリスの学士課程教育における職業分野の実践領域と学術知識の結合の試み:「こども学」を事例として」を発表することができた。 現在は、「事例研究」として、Campbell-Barr編著の学生用教科書の分析を行っており、その成果は、2023年6月に実施される日本比較教育学会の研究大会において「イギリス高等教育の新しい教育分野における知識の系統性:V. Campbell-Barrによる『こども学』の教育知識の検討」として発表予定である。 その他、2022年9月29日に、①の「知識論」の分野で注目しているバース大学教育学部のAbbas教授とのオンラインでの面談を実施し、研究全体への助言を得ることができた。また、日本におけるイギリス高等教育論・比較教育学の先行研究の分析を行い、本研究の日本における位置づけの検討を継続的に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イギリスに現地訪問し、主要な先行研究の著者本人との研究上の対話と、イギリスの学会での最新情報収集を予定していたが、日程調整がつかず、実現することができなかった。とくに、イギリスのバース大学のAbbas教授とは、2022年9月29日にオンラインで面談し、私の研究計画について説明し、同大学のHordern博士と3人との、月1回の3か月継続的な議論(2022年12月~2023年3月)を行うことについて合意できたが、一方、バース大学内での受け入れ手続きをうまく進めることができず、その計画を実現することができなかった。 日本職業教育学会に2022年8月に提出した論考の査読結果が不採択になり、査読コメントをふまえ、研究計画を調整する必要が生じた。具体的には、査読コメントから、研究の方法として「知識論」「制度論」「事例研究」のエッセンスを統合して議論することは非現実的であり、それぞれに焦点を絞って議論をまとめることの重要性を学んだ。一方で、結合して議論することがオリジナリティと考え、研究全体の視点のオリジナリティをできるだけ早く発表する予定でいたので、その見直しが必要になった。
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Strategy for Future Research Activity |
「知識論」「制度論」「事例研究」に焦点を絞り、それぞれのトピックに関係する文献・政策文書の研究をすすめ、その研究成果をまとめ、学会で発表をしいく。2024年9月のBERA(イギリス教育学会)での研究発表を目指す(スケジュール:2024年1月末:発表概要の提出)。 イギリスに現地訪問に関しては、引き続き、主要な先行研究の著者本人との研究上の対話の機会を模索する。具体的には、①2023年9月に実施されるBERA(イギリス教育学会)の研究大会に参加し、最新の研究動向を収集する。②主要な先行研究を行っているバース大学のAbbas教授、同大学のHordern博士、プリムス大学教育学部のCampbell-Barr准教授、エジンバラ大学のRiddell教授に連絡をとり、継続的な議論の可能性を探る。③以前、留学していたときに研究指導を引き受けてくださっていたノッティンガムトレント大学のChantrey Wood博士に連絡をとり、「こども学」専攻の大学生への調査の実施についてアドバイスを受ける。
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Causes of Carryover |
イギリス現地訪問が実施できなかったため、その分の予算が未使用になった。 次年度は、未使用の予算分も含め、イギリス現地訪問のための調整をより計画的に行う。
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