2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploring the Potential of English Language Learning as Empowerment for Women from Rural High Schools: Perspectives on Educational Disparities
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22K20287
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
早崎 綾 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (60961662)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 英語教育 / 教育格差 / 地域格差 / ジェンダー / ライフストーリー / 複線径路・等至性アプローチ / 再帰性 / reflexivity |
Outline of Annual Research Achievements |
今日の英語教育研究において、教育格差は世界的に喫緊の課題である。しかし、国内で格差の観点から英語教育を検討した研究は十分にはない。本研究の目的は、教育機会の地域格差とジェンダー格差に着目し、地方高校出身女性の人生径路における英語学習の役割とエンパワメントの可能性を探索することである。具体的には、日本の地方女性の人生・キャリア発達における英語学習の役割をテーマにライフストーリーインタビューを行う。 本研究は、四年制大学進学率が全国最下位水準である鹿児島県出身の女性を対象とし、以下3つのフェーズ(研究)に分けて行う。 ①鹿児島市内公立高校での英語PBL経験者のキャリア選択過程 ②鹿児島県内地方私立高校英語コース卒業生の多様な進路選択過程 ③鹿児島県内地方出身女性である研究者自身の意識変容過程 データ収集・分析には、主に複線径路・等至性アプローチを用いる。本研究では、研究者自身が対象地域の出身女性として参加者とアイデンティティを共有し共同構築していく。萌芽的な質的研究の手法を用いて、 従来の量的研究では明らかにならなかった当事者視点での学習経験の回顧的意味づけを理解し、英語学習と教室を超えた個人の人生をより有機的に結ぶ研究・実践の提案をめざす。また、研究者の再帰性について考察する上でとりわけ感情の複雑性やアイデンティティの交差性に着目し、近年の外国語学習者や教師をめぐる感情研究やアイデンティティ研究との接続もめざしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は分析結果の一部を使って国際学会発表・論文出版を行った。 また、本研究を進める中で自身の研究者としての位置付けや研究対象の位置付けについて振り返り、結果として研究計画に必要な変更を加えることになったが、新たな方向性と本研究の意義を見出すことができた。具体的には、本研究開始当初は上記①を中心とした研究を計画していたが、データ分析の過程において研究者の再帰性の役割が新たに重要なテーマとして表出した。再帰性とは、研究者が研究で設定した課題や研究対象者の立場、個人の信念や感情などが研究にどのような影響を与えるかを検証するプロセスのことである。質的研究では研究者は研究そのものの一部であり、必ずしも中立的な立場ではないため、研究者の背景知識などによって研究結果がどのように影響されるかを示す必要がある。そこで新たに②③のフェーズを追加し、結果を統合して分析を進めていくこととした。 ①では、学校内外の英語でのプロジェクト型学習(英語PBL)の機会が地方女子高校生の進路選択をよりチャレンジングなものに変える力になり得ることを示した。しかし、学習者がより難関な進学先・就職先の選択(いわゆる社会的上昇移動)を達成することだけを英語学習の意義を結びつけて議論することには疑問が残った。そこで研究②では、地方高校の英語コースに所属していた女性を【日本の一般的な高校生よりも英語に投資した女性】と捉え、その中でも四年制大学進学以外を含む多様な進路選択をした女性にインタビューを行うこととした。研究②での課題は、研究者自身の友人を研究対象とすることで浮かび上がってきた複雑な感情や、本研究における研究参加者と研究者自身の関係性の捉え方に関するジレンマであり、ここで研究者の再帰性をめぐる課題を強く意識することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究①②での考察をふまえ、研究③では研究者自身のライフ・キャリアの径路全体とその中での英語学習経験の役割を振り返りつつ、その中で確立してきた複数のアイデンティティ(研究者としてのアイデンティティを含む)がどのように研究①②に影響を与え、また影響を受けてきたか考察する。 今後の方向性としては、研究者の再帰性について考察する上でとりわけ感情の複雑性やアイデンティティの交差性に着目し、近年の外国語学習者や教師をめぐる感情研究やアイデンティティ研究との接続もめざしていく。
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Causes of Carryover |
今年度も引き続きデータ収集・分析、文献レビュー、論文執筆を進めていく。 残りの使用額は進行中のデータ収集(インタビュー)の謝礼、追加で必要な文献レビューの書籍代、研究成果を発表しフィードバックを得るための学会参加費、論文の校正費用などに使用予定である。
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Research Products
(2 results)