2023 Fiscal Year Annual Research Report
An empirical investigation of the expectations of AI's ethical decisions
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22K20320
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷辺 哲史 早稲田大学, 文学学術院, 講師(テニュアトラック) (20964480)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 人工知能 / 自動運転車 / 規範 / 公正感 |
Outline of Annual Research Achievements |
・規範が競合する場面でのAIの判断に対する市民の期待 第1年度に実施した調査では、暗黙の規範の具体例として法定速度と実勢速度(道路上で多くの車が実際に走行している速度)との乖離を取り上げ、人間と人工知能では従うべきと見なされる規範が異なるかを検討した。最終年度には引き続き本調査のデータ分析を行い、成果の報告を行った。回答者自身の運転行動の個人差による調整効果を分析したところ、実勢速度に従う傾向が強い人ほど、法定速度を守る自動車へのポジティブ評価が低下したが、その効果は人間が運転する自動車の場合の方がより強く、自動運転車に対してはその効果が小さくなるという交互作用があった。このことは、AIは人間の行為者ほどには暗黙の規範に従うことを期待されていないことを示唆する結果といえる。本研究の成果は2023年度の日本グループ・ダイナミックス学会大会にて報告された。
・AIによるバイアスのある判断に対する道徳的評価 企業の人事評価や金融機関の審査など、個人に対する評価を行う場面で、性別などの社会的カテゴリーが判断に影響する統計的差別という問題がある。本研究では、こうしたバイアスのある判断を人間が行ったときと、AIを利用したときで、バイアスに対する不公正さの評価が変わるかを検討した。銀行の融資審査で女性が不利に扱われるという架空の事例を題材にして調査を行ったところ、男性回答者において、AIの判断でバイアスが起きたときの方が印象が良くなるという差が見られた。このことは、結果的に生じるバイアスが同じであっても、AIが判断したという情報によってネガティブな印象が緩和されてしまう可能性を示唆する。本研究の成果は2024年度に学会大会で報告予定である。
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