2022 Fiscal Year Research-status Report
幼児期における自己顔を介した共感性の生起メカニズムの解明
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22K20327
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Research Institution | Seika Women's Junior College |
Principal Investigator |
新田 博司 精華女子短期大学, その他部局等, 講師 (50966976)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 自己 / 顔処理 / エンフェイスメント錯覚 / 共感性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自己顔に関わる錯覚現象であるエンフェイスメント錯覚(Enfacement Illusion, EI)によって生じる共感性において、自己顔に関わる単一の視覚情報処理と視覚触覚情報の同期性にもとづく多感覚情報処理の位置付けを示すとともに、その発達的様相を明らかにすることである。EIとは、顔の頬を絵筆で撫でられるモデルの他者を観察しながら同様に同じ位置の頬を撫でられると、観察者は知覚上の自己顔イメージが観察している他者顔に似たように錯覚する現象であり(Tsakiris, 2008)、近年、この錯覚の生起により自己顔の表象の変化だけでなく、観察した他者に対する共感性が高まることが成人を対象にした研究から報告されている (Panagiotopoulou et al., 2017)。本年度は、5-6歳児を対象に自己顔との視覚的類似性が観察した他者への共感性の生起に寄与するか(研究1)、そして、EIの生起により観察した他者への共感性は高まるか(研究2)についての検討を予定していた。具体的な方略として、研究1・2において画像合成技術を用いて自己顔と類似した合成顔を生成する。また、研究2では、成人研究で用いられたEIを生起させる手続き(Tsakiris, 2008)を採用し、5-6歳児を対象にしたEIの生起と共感性の関連を検討する。視線計測器を用いて顔刺激に対する視線運動を計測するとともに、参加児は質問紙を通じてモデルとなる他者に対する共感性の評定を行う。本研究の完遂により、自己顔を介した共感性の発達的様相を理解する新たな手がかりとなるとともに、共感性の生起メカニズムを解明するための一助となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、研究1・2を実施するため研究に必要なモデルの他者顔の撮影を行った。具体的には、5-6歳の男児及び女児2名ずつ(計4名)の顔写真の撮影を行った。研究の準備は整ったものの、手続きの精緻化のため実施する予定であった対面の予備実験がCOVID-19の影響により実施困難となった。次年度以降、対面での予備調査をはじめ、研究1・2を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず予備実験を実施し考案した研究手続きの検討及び修正を行う。その後、研究1・2を順次実施する。研究1・2の実施後、得られたデータ(①視線運動、②EIの錯覚量、③モデルの他者に対する共感性の評定)の分析を行い、自己顔を介した共感性における視覚情報処理および視覚触覚情報処理の役割とその発達的特徴について考察を行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で、予定していた実験の実施が困難であったため、計画した謝礼金が余ることになった。次年度以降、実験を再開した際に繰り越した助成金を被験者の謝礼金として使用する予定である。
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