2023 Fiscal Year Annual Research Report
環境感受性の個人差を踏まえた自然体験活動の効果:青年の適応促進に向けて
Project/Area Number |
22K20329
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Research Institution | National Institution For Youth Education Research Center for Youth Education |
Principal Investigator |
矢野 康介 独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター, 青少年教育研究センター, 研究員(移行) (30967568)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 環境感受性 / 感覚処理感受性 / 自然体験 / メンタルヘルス / 青年期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、自然体験活動への参加とメンタルヘルスとの関連について詳細な検討を行うことで、より建設的な自然体験活動を展開するための示唆を提供することである。具体的には、自然などのさまざまな環境要因からの被影響性の個人差を表す、環境感受性(以下、感受性と略記)の枠組みに注目し、その個人差に応じた効果的な活動内容の提案を目指す。令和4年度の研究では、主に2つの知見が得られていた。(1)中高生を対象とした横断的調査より、1ヶ月あたりの自然体験活動の実施時間とメンタルヘルスの関連は、感受性の程度に調整されなかった。(2)短期宿泊型の自然体験活動の前後における抑うつ傾向の変化量は、感受性の個人差に応じて異なることが示された。 以上の研究内容やそこで生じた課題を踏まえ、令和5年度には、報告者の所属機関が保有するデータセットを用いて2件の追加分析を行った。 第一に、中高生1,400名を対象とした4時点の縦断的データ(各3ヶ月間隔)を用いて、潜在成長モデルに基づく分析を行った。その結果、調査期間を通じて自然体験活動の実施時間が長くなった個人ほど、メンタルヘルスが改善される傾向にあった。なお、令和4年度と同様に、両者の関連に対する感受性の調整効果は認められなかった。 第二に、短期宿泊型自然体験活動の参加者(小中学生)393名を対象とした、3時点(活動前、活動後、活動1ヶ月後)の縦断的データを用いて、潜在成長モデルに基づく分析を行った。その結果、活動の中で何らかの物事に挑戦し、達成する経験が多いほど、活動1ヶ月後のメンタルヘルスが良好であることが示された。また、感受性が高い場合には、活動の中で自分の意見や感情を積極的に伝える経験の多さが、活動1ヶ月後のメンタルヘルスの良好さと関連を有していた。
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