2022 Fiscal Year Research-status Report
Mathematical analysis on solitary waves for nonlinear dispersive equations
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22K20337
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
林 雅行 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), その他(招聘研究員) (60967850)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 非線形分散型方程式 / 非線形シュレディンガー方程式 / 定常解 / 孤立波 / 不安定性 / 変分法 / 進行波解 / 代数ソリトン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は二重冪相互作用を持つ非線形シュレディンガー方程式(NLS)における定常解の不安定性の研究を中心に行った。定常解は空間遠方で代数的な減衰をし、指数減衰する通常の定在波と比べて性質が大きく異なり、解析も難しい。安定性/不安定性に関しては線形化作用素のスペクトルの観点から一般論にのせることができず、特に正の周波数をもつ定在波の場合と異なり、線形化作用素の強圧性がエネルギー空間の枠組みで成り立たないことが主要な難しさとなる。 本研究ではまず、周波数でパラメータ付けされた定在波の族に対して、零周波数における片側導函数をODE的手法で構成し、その遠方における最適な減衰度/増大度を導出した。次にこの片側導函数を用いて、定在波の不安定性の一般論と整合する不安定方向を構成し、変分的特徴付けとリャプノフ汎函数の議論を経由して定常解の不安定性を証明した。エネルギー空間に属さない片側導函数を適切に局所化し、線形化作用素の強圧性の代わりに定常解の変分的特徴付けを応用することが解析の重要なポイントである。1次元の場合は最適と期待される条件のもとで定常解の不安定性を証明することに成功した。解析の全体的な流れは多次元にも適用できるが、いくつか技術的な問題点が現れ、その一部は今後の課題として残されている。また不安定性理論における片側導函数の構成は臨界減衰をもつポテンシャル付き線形シュレディンガー作用素の理論と密接な関連性があることが分かった。 上記以外の成果としては、昨年度から研究していたNLSの連立系における進行波の研究結果を論文に纏め、Math. Ann.に掲載受理された。進行波の変分問題において、エネルギー臨界の問題が現れること、プロファイルの楕円型方程式から非局所的な問題が現れることなど、いくつか興味深い観点を新たに発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定常解(代数ソリトン)の不安定性は従来の一般論の枠組みから外れ未解決のまま残されていた問題である。本研究で整備された解析手法は定常解の新たな性質を捉えており、より一般的な設定においても拡張が期待できる手法となっている。線形シュレディンガー作用素の理論との密接な関連性からは、代数ソリトンにまつわる数理の豊穣さを垣間見ることができ、興味深い。一方で多次元の不安定性の解析で現れる技術的問題は本年度中にすべて解決することができず、今後の課題として残されている。NLSの連立系の研究においては、問題の豊富さを見出し、今後の発展が期待できる一方で、解析の技術開発の観点からは進展があまりなかった。以上を勘案しておおむね順調の進捗と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
多次元における二重冪NLSの定常解の不安定性理論を完成させる。本年度の研究で明らかになった解析の技術的問題は線形シュレディンガー作用素の理論で現れる臨界性の難しさに起因している。そこで近年発展している臨界減衰をもつポテンシャル付き線形シュレディンガー作用素の理論との関連性を整備し、問題点の解決を試みる。次年度は定常解の安定性の問題にも取り組む予定である。その他、上記のNLSの連立系や微分型NLS、対数型NLS、半波動方程式など、孤立波の構造が豊かな非線形分散型方程式の研究も進めていく。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の移籍が年度途中に決まり、出張計画に変更が生じたため。次年度使用額は海外での研究滞在に使用する予定である。
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Research Products
(11 results)