2022 Fiscal Year Research-status Report
次元が無限大に発散する空間列の幾何解析的な収束理論の展開
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22K20338
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
数川 大輔 九州大学, 数理学研究院, 助教 (40963202)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 測度距離空間 / 集中位相 / 測度の集中現象 / ピラミッド / 無限次元極限 / ボックス位相 / 主束構造 / Cauchy分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
測度距離空間およびその拡張概念であるピラミッドに関して,以下の3つの研究を行った. 1つ目の研究では,東北大学の横田氏と共同で,測度距離空間族における位相的有界性と順序的有界性の同値性について研究を行った.我々が以前証明した同値性のある種の局所版が成り立つだろうと予想し,その証明を行い,論文にまとめ,現在投稿中である.またその証明のテクニックは非常に緻密で横田氏によって別の主張の証明にも応用されている. 2つ目の研究では,東北大学の塩谷氏・中島氏と共同で,測度距離空間全体の上に定まるボックス位相・集中位相およびピラミッド全体の上に定まる弱位相について位相的性質を調査した.昨年度中までに得られていた局所コンパクト性,σコンパクト性,Baire性,(大域)可縮性,測地性,局所連結性の有無に加えて,新しくスケーリング作用に関する主束構造についての結果を得ることが出来た.この研究に関する論文を執筆し,現在投稿中である. 3つ目の研究では,福岡大学の三石氏・江崎氏と共同で,Cauchy分布を持つユークリッド空間(以下,Cauchy空間と呼ぶ)の集中位相に関する無限次元極限を決定した.実際,適切にスケールしたCauchy空間の次元を無限大に発散させた極限は1次元の半直線になることが分かった.これは正規分布の場合などの従来の結果とは全く異なる現象であり非常に興味深い.また我々はこの例を一般化し,収束する空間列に対する錐の収束という一般論も構築した.この研究に関する論文は現在執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の上2つの研究では測度距離空間全体の空間の幾何学に大きな進展を与えたと言える.特にスケーリング作用に関する主束構造のような非常に非自明な構造にまで研究が及んだことは大きな成果と言える.またCauchy空間の極限の決定も非常に興味深い新しい現象である.またこの現象は分散や重み付きリッチ曲率などの幾何解析的な量を観察し,測度の集中現象と絡めて考察することで得られた結果である.この結果を基に不変量の収束に関する研究にも取り組みたい.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により測度距離空間やその拡張概念であるピラミッドに関する理解が深まっている.今後はこれまでに得られている例に新たに得られたCauchy空間の例を加えて考察することで,不変量の収束性について議論をしていきたい.特に関数不等式の最良定数や高次の分散や固有値に対する収束性を考察したい.またCauchy空間のような具体的な空間列の無限次元極限の決定問題にも引き続き取り組み,豊富な例のある収束理論を目指していく. また測度距離空間全体の空間の幾何学では,全体空間の調査が今回進展したが,部分空間に制限すると未解明のままである性質が多い.この方向性に対する次なる問題は部分空間の理解であり,その手法の開発になると思われる.この話題についても引き続き議論していきたい.
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Causes of Carryover |
研究に必要な機器の引き継ぎおよび研究環境のおかげで研究の最初にかかる物品費が抑えられた.またカナダ旅費を比較的安く抑えることができた.差額は次年度交付金と合わせ,旅費として用いる予定である.
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