2022 Fiscal Year Research-status Report
高階幾何学的変分問題の研究と勾配流の漸近解析への応用
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22K20339
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉澤 研介 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 学術研究員 (80965286)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 曲げエネルギー / p-曲げエネルギー / 変分問題 / 安定性 / 境界値問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は曲率の p 乗ノルムで定義される p-曲げエネルギーと呼ばれる汎函数に対し、境界条件や長さ一定などの束縛条件を与えた下での臨界点について以下に挙げるような研究を行った。これは三浦達哉准教授 (東京工業大学) との共同研究に基づくものである。
【1】曲線長と両端点間の距離が固定された束縛条件の下、 p-曲げエネルギーの臨界点を完全に分類した。加えて、各臨界点のエネルギーを定量的に比較することで最小元の一意性も示した。特に、両端点間の距離が 0 であるときの最小元として half-fold figure-eight p-elastica と呼ばれる臨界点が現れるが、この臨界点の両端点の接ベクトルのなす角が p について単調であることを示した。これにより、臨界点の幾何学的な特徴付けを与えたと見なすことができる。さらに、応用として p-曲げエネルギーと多重度に関する Li-Yau 型不等式を得た。論文は現在査読中。
【2】上記で得た p-曲げエネルギーの臨界点の安定性を調べた。ここで臨界点が安定であるとは、許容集合内で局所最小元であることをいう。一般に、臨界点の安定性を調べるには汎函数の第二変分を調べることが有効であるが、p-曲げエネルギーの場合、汎函数がもつ非線形性から第二変分は非常に複雑に与えられる上に、汎函数の特異性から臨界点周りで第二変分が定義できない場合が生じる。そこで、本研究では複雑な第二変分の計算を用いない代わりに汎函数の幾何学的性質を用いることで、臨界点の安定性を判定する方法を新たに導入した。特に、この方法により、p が 2 以下である場合には大域最小元を除く全ての臨界点が不安定であることが導かれる。論文は現在査読中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ある境界条件での最小元の一意性や臨界点の幾何学的な特徴付け、安定性など、臨界点についての研究は一定の成果が既に得られた。一方、勾配流の漸近解析への応用はまだ準備段階であり次年度に着手する予定であるため、現段階の達成度としておおむね順調であると結論してよいものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
p-曲げエネルギーの臨界点の安定性に関する研究を引き続き三浦達哉氏 (東京工業大) との共同研究として進める。特に、安定性を議論することが困難と思われる臨界点の存在が昨年度の研究により判明したため、新たなアプローチを見出すことにより安定性の完全解決を目指す。 また、障害物問題と呼ばれる変分問題について、解の爆発現象などの勾配流に対する漸近解析を M. Mueller 氏 (Leipzig University) との共同研究として行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、令和5年度請求額とあわせて令和5年度の研究遂行に使用する予定である。例えば、未使用額を令和4年度で得られた研究成果の発表のための旅費に用いることで、研究の更なる発展を促すことを予定している。
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