2023 Fiscal Year Annual Research Report
An interfacial charge transfer approach to electron-doping layered nickelates
Project/Area Number |
22K20347
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長田 礎 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00956287)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | ニッケル酸化物 / 超伝導 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
はじめに、ペロブスカイト構造を持つニッケル酸化物LaNiO3についてパルスレーザー堆積法による堆積条件探索を行い、高い結晶性を有する単結晶薄膜の合成条件を確立した。その後、CaH2粉末を用いたトポケミカル還元によって頂点酸素を選択的に脱離し、無限層構造に還元した。このアニール温度を段階的に昇温させることで、低温処理条件では弱い絶縁体的な状態だった伝導特性が、適切な処理温度で超伝導状態に変化することを見出した。アニール温度の調整の結果、SrドープしたLaNiO2の超伝導転移温度を向上することに成功した。また、様々なSrドープ量において系統的な還元温度最適化を施すことで、温度-Sr空間における超伝導相を拡大し、既報文献より高い超伝導転移温度を有する試料の作製に成功した。 無限層ニッケル酸化物で起きる超伝導は、これまで正孔ドープされた化合物に限られていたが、電子ドープ型化合物の合成報告はまだない。電子ドープを誘起するために、積層構造を用いた界面電荷ドープに取り組んだ。まず、界面電荷移動を誘起する第二層物質としてLaTiO3を堆積したが、この物質はLaNiO3の合成条件よりも還元雰囲気で安定化することが確認された。そのため、LaNiO3と合成条件が近いLaFeO3を第二層物質として選択し、LaFeO3/LaNiO3のヘテロ構造を作製した。さらに、還元処理によりLaFeO3/LaNiO2薄膜を安定化させることに成功した。この試料の低温電気輸送特性を調査した結果、ゼロ抵抗を観測することはできなかった。界面電荷移動を誘起するためには、より急峻な界面を持つヘテロ構造薄膜の作製が必要であると考えられる。本研究課題の実施期間中、界面電荷移動による電子ドープ型超伝導の実現はできなかったが、超伝導特性が向上した高結晶性の試料の合成条件を確立できた。本研究成果は、ニッケル酸化物超伝導のさらなる物性研究の基盤となると考えられる。
|