2023 Fiscal Year Annual Research Report
Si/Al界面のナノスケール傾斜制御と高効率スピン流生成に関する研究
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22K20359
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
洞口 泰輔 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特任助教 (10964744)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピン渦度結合 / スピントルク / 磁化ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は電気伝導度勾配を生み出すSi-Al傾斜材料の作製、成膜・熱処理条件による傾斜制御、およびスピン流生成効率定量化を通したスピン渦度結合の物理解明である。 前年度実施した、Si-Al傾斜材料/NiCu成膜後に熱処理を行う手法ではAl/NiCu界面での原子混合に伴うNiCuの磁化消失がスピントルクの評価の妨げとなった。そこで、本年度はNiCu成膜前段階で傾斜材料部分のみの熱処理を行った。熱処理前成膜にはスピントルク効率が最大となる条件を用い、傾斜材料層の成膜後に異なる温度で30分間の熱処理を施した試料を作製した。それぞれの試料に対しST-FMR測定を行った結果、熱処理前の試料よりもスピントルクが減少、さらに熱処理温度増加に伴ってスピントルク効率が単調減少する傾向が見られた。熱処理温度増加に伴って、Si/Al界面の拡散促進により傾斜幅が広がると考えられるため、この単調減少は傾斜幅とスピン流生成効率の相関を示す証左である。また、前年度の実験で得られた傾斜幅が小さいほどスピントルク効率が増大する傾向とも矛盾しない。本年度の実施において熱処理による傾斜制御とスピントルク変調に成功したといえる。 本研究では、傾斜材料のスピントルク効率を最大化する成膜条件を確立、熱処理による変調に成功した。傾斜幅減少に伴いスピントルク効率が増大する傾向は電流渦とスピンの結合であるスピン渦度結合由来のスピン流生成を強く示唆している。しかし他の機構(軌道ホール効果等)の寄与を分離評価するには至らず、機構解明には検出磁性体の材料依存性調査等からの多角的検証が必要である。本研究で確立した成膜・熱処理によるスピントルク効率変調の手法はSi-Alのみならず汎用な材料組み合わせに適用可能であり、傾斜材料を用いたスピン流生成に関して設計指針と作成手法を提示する成果をあげたといえる。
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Research Products
(4 results)