2022 Fiscal Year Research-status Report
Unconventional nature of superconducting NbSe2 atomic layers
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22K20362
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
成塚 政裕 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20960173)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 超伝導 / 原子層薄膜 / ツイストロニクス / 走査トンネル顕微鏡 / 分子線エピタキシー法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、回転対称性の低下した超伝導状態の発現が報告されている遷移金属カルコゲナイド超伝導体NbSe2に対し、走査トンネル顕微鏡(STM)測定を用いた準粒子干渉効果(QPI)測定から超伝導状態を直接的に調べる研究を行った。具体的には、(1) STMに適したレベルの清浄で平坦なNbSe2超薄膜の作製、(2)単層NbSe2薄膜上でのQPIを行った。(1)では、申請時から発展し、シリコンカーバイト基板上のエピタキシャルグラフェン膜上に広く平滑なNbSe2単層薄膜の作製に成功した。NbSe2単層薄膜成長時の条件だけでなく、エピタキシャルグラフェン膜の成長条件がドメイン壁や格子欠陥の少ない高品質なNbSe2単層薄膜に重要であるという知見を得た。(2)では、NbSe2超薄膜のSTM測定を行い、実際に単層NbSe2で知られている電荷密度波秩序、明瞭なコヒーレンスピークを持った超伝導ギャップの測定に成功した。さらにQPI測定から、NbSe2の結晶軸方向と異なる方向を向いたシグナルが超伝導状態のフェルミエネルギー極近傍でのみ発達することが明らかになった。詳細な構造の分析から、興味深いことに実際の試料では基板のグラフェン膜とNbSe2単層膜の結晶軸が自然にひねり角をもって積層し、さらに超伝導の電子状態にそのひねり積層の効果が現れていることが明らかになった。この結果は、先行研究で報告された回転対称性の低下とは異なる種類の回転対称性の低下した超伝導状態であり、下地であるエピタキシャルグラフェン膜とNbSe2がつくるモアレ周期を反映したポテンシャルの空間変調がNbSe2の超伝導状態に影響を与えている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、バルクでは従来型超伝導を示す物質が原子層程度への薄膜化や異種物質との接合によって超伝導の特性を変えるメカニズムを調べることであり、その観点からこれまでに報告のない回転対称性の低下した超伝導状態を観測したことは、現在までの進捗状況として格段の進展があったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
下地であるエピタキシャルグラフェン膜とNbSe2がつくるモアレ周期を反映したポテンシャルの空間変調がNbSe2の超伝導状態に影響を与えている可能性があるため、積層のひねり角度を変えた場合にどのように超伝導状態が変化するかは今後取り組むべき課題である。積層角度は試料作製時に制御できず、測定時に決定するため今後も実験を継続しデータの蓄積が必要である。また、特異な超伝導発現機構に関して、理論家とも相談しながら検討を行う。
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Causes of Carryover |
予算の見積の段階で予定していた特殊な蒸着セルが国際状況の不安定さや為替変動などにより想定外に納期が長くなり、価格も見積をはるかに超えることが分かったため購入しなかった。したがって、その余剰金額の一部が次年度使用額に回っている。蒸着セルの代替案として既存の蒸着セルと同タイプのもの購入をするべく現在選定を行っている。
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