2022 Fiscal Year Research-status Report
室温変形による磁気構造転移の制御とダイナミクスの解明
Project/Area Number |
22K20363
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森 竣祐 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (60962975)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 透過型電子顕微鏡 / 磁気構造 / 応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、スキルミオンやヘリカル磁気構造を示す磁性材料の加工を行い、局所的な変形が可能な形状に設計することを主な研究目的とした。作製方法には集束イオンビーム法を用いており、板状から棒状の形までマイクロメートルオーダーで制御することが可能である。同時に、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察可能な厚さに薄片化した。作製した試料を用いて、ローレンツTEM観察により外部磁場を印加しながら磁気構造を観察し、同時に室温で試料に荷重を印加できることを確認した。印加する荷重の大きさは段階的に制御でき、またそれぞれの大きさで一定の時間保持できるため、各段階における磁気構造のその場観察が可能である。したがって、本研究の室温変形における磁気構造変化の直接観察に向け、基本的な実験環境を構築することができた。 観察試料の設計と並行して、試料中に生じる応力の大きさを有限要素法によりシミュレーションした。その分布をマッピングすることで、磁気構造変化を誘起する応力の大きさや変位の方向との関係など、観察結果と比較して解析を行っている。応力の計算結果は、試料のジオメトリや境界条件、材料の弾性率など物性にも依存する。これらの結果から、どのような形状や実験条件が応力の影響を調査するのに効果的であるかなど、試料作製の次なる指針にフィードバックできる。現在は、応力分布が均一になるような比較的小さな棒状などに加工しており、ジオメトリの影響を調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で行っている、室温変形における磁気構造変化の直接観察は独自性の高い実験手法であり、その環境を構築することそのものにも意義がある。現在は、試料のジオメトリが応力分布に及ぼす影響など具体的な指針も得られており、磁気構造変化の観察結果との関連性を議論することが可能と考えられる。したがって、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
有限要素法の結果をフィードバックして試料の形状を最適化し、応力と外部磁場が磁気構造に及ぼす影響を体系的に調査する。これらの外場に伴う磁気構造変化の過程を観察し、そのメカニズムやダイナミクスを明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度において、試料加工に必要な集束イオンビーム装置の関連部品や透過型電子顕微鏡のホルダー周りの物品を購入するため使用額が生じた。
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