2023 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of relativistic hydrodynamics involving spin and axial charge and its application to QCD plasmas
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22K20369
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
本郷 優 新潟大学, 自然科学系, 助教 (10779656)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | スピン / 近似的対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
相対論的重イオン衝突実験において観測されているラムダ粒子のスピン偏極は,生成されたQCD物質が非常に大きな角速度をもっていることを示唆している.この観測結果に動機づけられて,ハドロン相におけるバリオン(核子・ラムダ粒子)の持つスピンの緩和ダイナミクスに関する研究を行った.そのために,低温領域でハドロン多体系がパイ中間子で構成されるとしてよく近似できることを注目し,パイ中間子気体中のバリオンの緩和ダイナミクスを記述する理論的枠組みを定式化し,その枠組みに基づいてバリオンのスピン緩和ダイナミクスを理論的に記述した.具体的には,パイ中間子気体中のバリオン1粒子に関する縮約密度行列の運動方程式をまず導出した.このとき,得られた縮約密度行列の運動方程式を解くためには,パイ中間子とバリオンの散乱過程に関する情報(特にスピンがフリップするプロセスの散乱振幅)が必要になる.核子・パイ中間子散乱については,実験で得られていた散乱の位相シフトを用いることでモデルに依らない予言を出すことができたが,一方,ラムダ粒子・パイ中間子散乱に関してはそのような精密なデータが存在しない.そこで,ラムラ粒子・パイ中間子散乱についてはハドロンスペクトルの情報あるいは低エネルギーの散乱過程を記述することができるカイラル摂動論による最低次のプロセスにより記述した.以上の方法により,パイ中間子気体で近似される低温相において,核子・ラムダ粒子スピン緩和率を評価することができ,論文として研究結果を出版した.また,これとは独立した研究として,QCDのカイラル対称性のように近似的対称性に付随した電荷の緩和率を記述する方法についても研究を進めた.対称性が自発的に破れた相においても,その緩和ダイナミクスの記述方法が部分的にわかりつつある.
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