2023 Fiscal Year Research-status Report
Challenges in Neutron Lifetime Measurement Using Lunar Orbiting Satellites
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22K20374
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 直希 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (80963537)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 中性子寿命 / 気球実験 / 放射線検出器 / シンチレータ / SiPM |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子の寿命がビーム法とボトル法という主要な測定手法により違いがある問題に対して、惑星探査衛星による新しい測定手法が考案されている。本研究ではその実現に向けて、月周回機に搭載可能な小型中性子検出器を開発し、宇宙環境の模擬試験として気球実験を計画している。熱中性子・高速中性子・ガンマ線を弁別できるプラスチックシンチレータEJ-270を光センサーSilicon Photomultiplier (SiPM)で読み出す、新しい技術を使った中性子検出器を開発した。 (1) EJ-270を使った検出器の性能をさらに向上させるために、電子回路基板を刷新した。4 chでの信号読み出しやGPSによる時刻同期に対応したことに加え、宇宙機や気球での利用に向けて小型化・低消費電力化を図った。さらにSiPMとしてこれまで使用していたMPPC S14160-6050HSより、S13360-6050VEの方が熱中性子・高速中性子・ガンマ線の波形弁別の性能が良いことを発見し、後者の動作電圧等に最適化した基板設計を行なった。 (2) 高温・低温での動作試験及び較正試験を行なった。宇宙機及び気球実験では高温・低温時に安定して動作する必要があり、特にSiPMは温度依存性があることが知られているため、-20~50度の範囲で性能試験を行なった。温度により信号利得や波形弁別の性能が異なることが分かり、動作電圧の補正や検出器温度の安定化に取り組んだ。 (3) 宇宙機及び気球実験用に検出器筐体を設計した。最大8 chの検出器ユニットを搭載可能で、読出基板と合わせて超小型衛星キューブサット1U~2Uサイズに収まるように設計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
天候や資材供給不足のため気球実験を予定通り実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) EJ-270を使った検出器の性能をさらに向上させるために、ファームウェアの更新や解析パラメータの最適化を行う。熱中性子・高速中性子・ガンマ線をさらにはっきりと波形弁別できるよう、アルゴリズムや解析手法の改良を行う。 (2) 製作した検出器を用いた気球実験を行う。ロケット発射時の振動や大気圏・軌道上での熱真空試験、高レートの放射線環境など、宇宙と同等の環境下での検出器の実証試験を行う。さらに宇宙線大気シャワーの中性子成分のより詳細な理解を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度実施できなかった気球実験を次年度実施するために予算を確保している。次年度は検出器の開発、気球実験の実施、成果報告にかかる費用、などに使用する。
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