2022 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative clarification on the cycle of phosphate in the hydrosphere by using the triple oxygen isotopes of phosphate as a tracer
Project/Area Number |
22K20381
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三歩一 孝 名古屋大学, 環境学研究科, 特任助教 (90962936)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 溶存無機態リン酸 / 三酸素同位体組成 / 現場濃縮 / 水酸化アルミニウム / カラム吸着 / 河川 |
Outline of Annual Research Achievements |
水環境中におけるリン酸(PO43-)循環の理解は、環境変化の現状診断や将来予測を実現する上で重要である。リン酸の負荷源推定の指標として、リン酸の三酸素同位体組成(D'17O)が新たな指標として有用であることがSambuichi et al. (2023)で報告されている。本研究では、滋賀県野洲川を研究対象としてリン酸のD'17Oを分析し、水環境におけるリン酸循環の定量的な理解を深めることを目的とする。 明確な人為汚染のない一般的な河川のリン酸濃度は、1umol/L前後かそれ以下と低濃度であるため、D'17O分析に必要な量のリン酸を確保するためには100L以上の河川水を採水する必要がある。実際には、そのような大容量の水試料を現場から持ち帰るのは負荷が大きく困難であるため、リン酸を現場で濃縮し減容することが求められる。そのため、現場リン酸濃縮法の開発のために水酸化アルミニウムを吸着担体としたリン酸吸着実験を行った。具体的には、直径4mm程度の粒状水酸化アルミニウム(Alビーズ)を直径7cm高さ23cmのカラムに充填し、リン酸溶液を通水しリン酸吸着量を見積もった。その結果、リン酸二水素カリウムを超純水に溶解して調製した10umol/Lのリン酸溶液を約0.6L/minの流量でAlビーズカラムに通水すると、通水したリン酸の約20%がAlビーズに吸着することが明らかになった。その後、リン酸が吸着したAlビーズを80度に加熱した5mmol/Lの水酸化ナトリウム溶液に5分間浸漬することで吸着したリン酸の約50%を抽出できることがわかった。また、Alビーズへの吸着前後でD'17Oが変化しないことから、D'17O分析を目的としたサンプリングに適した濃縮手法であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、一年目終了時にAlビーズカラムを用いた現場濃縮法の開発が完了し、二年目から野洲川などでサンプリングを実施する予定だった。これまでの室内実験では、Alビーズのリン酸吸着能力については十分に検証できた。しかし、吸着したリン酸をAlビーズから抽出する実験条件は、未だ改善の余地があり、より高効率な抽出条件を探る必要がある。また、現在の濃縮条件では、1umol/Lの試料水から100umolのリン酸を回収する場合、約28時間かかる計算になる。そのため、本手法を用いた天然試料採取を実現するためには、より高流量下(例えば1.0L/min)でのリン酸吸着を実現する必要があり、それを検証するための基礎実験を行う必要があるが未実施である。以上の事項により、当初の計画よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は、まず高流量吸着実験を行う。これは、比較的リン酸濃度が高く、D’17O分析の実績がある愛知県天白川で行う。それと並行して室内実験では、Alビーズに吸着したリン酸を効率よく抽出可能な実験条件を模索する。具体的には、抽出に使う水酸化ナトリウムの温度や反応時間、Alビーズとの接触方法(バッチorフロースルー)を変えて検討する。以上の基礎実験によって最適な条件を見出した後に、滋賀県野洲川でサンプリングを実施する。河川水中リン酸のD’17O分析結果からリン酸動態を定量化し、それを愛知県天白川のような都市河川と比較して河川内におけるリン酸循環の理解を深める。
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Causes of Carryover |
計画当初は、アルミニウムスポンジを吸着担体として使用する予定であったが、より汎用性の高いアルミニウムビーズに変更したため使用金額が減少した。複数地点での同時サンプリングを実現するためによりたくさんのアルミニウムビーズが必要である。そのため、アルミニウムビーズやサンプリングシステムに関わる備品の購入に使用する計画である。
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