2023 Fiscal Year Annual Research Report
原子核乾板による高エネルギーガンマ線天体の偏光観測の実現
Project/Area Number |
22K20382
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 悠哉 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 特任助教 (30964457)
|
Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
|
Keywords | 宇宙ガンマ線 / 宇宙線 / 偏光 / 気球実験 / 原子核乾板 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子核乾板望遠鏡を用いた宇宙ガンマ線観測気球実験(GRAINE)において、高エネルギー宇宙γ線偏光観測の実現を目指して、原子核乾板読み取り装置の開発や2023年度実験実施に向けた検出器開発を昨年度から進めてきた。2022年度に望遠鏡の準備を完了し、2023年4月末に予定通り気球実験を実施した。GRAINE実験では初となる24時間以上の長時間フライトを達成し、宇宙γ線偏光観測の第一目標天体となるVelaパルサーだけでなく、暗黒物質起源の可能性がある未知のガンマ線放射が観測されており第二目標となる銀河中心領域の観測時間の確保に初めて成功した。 気象条件などによって当初想定よりも実験準備完了から実験実施までの期間が長くなったこともあり、原子核乾板に記録された飛跡の蓄積量が前回実験よりも数倍増加したが、これらのデータを効率的に読み出すための高速原子核乾板読み取り装置の開発を進め、世界最高速度での原子核乾板読み取りを達成することができた。得られた飛跡データの解析を進め、24時間以上の長時間フライトにおいて、検出機の各要素が狙い通りの性能で動作していたことを実証することができた。 上記の高速読み取り装置のみでは偏光観測を実現するには、読み取り装置の測定精度が不足しているため、2022年度から高精度な原子核乾板読み取り装置の開発を進めてきた。2018年に行った前回のGRAINE気球実験について、開発した高精度読み取り装置を適用してデータの再解析を行ったところ、既存のデータと比べて3倍程度の角度分解能の向上が得られ、原子核乾板の原理限界相当の空間分解能で飛跡データを読み出し可能なことを実証した。本開発についての学術論文も投稿間近であり、今後2023年度気球実験データの解析が進み本装置を適用することで、宇宙γ線偏光観測の実現が期待できる高性能な読み取り装置を開発することができた。
|