2022 Fiscal Year Research-status Report
X線精密分光観測と赤外線高空間分解能観測で探る合体銀河中のアウトフローの物理機構
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22K20391
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山田 智史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (90963520)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | X線天文学 / 赤外線天文学 / 超巨大ブラックホール / 活動銀河核 / 赤外線銀河 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、宇宙に存在する銀河と、その中心に普遍的に存在する超巨大ブラックホールの両者の形成過程の解明が主な目的である。これらは単調に成長するのではなく、銀河同士の合体とそれに伴うブラックホールへの質量降着により急激に成長する。両者の進化過程を知るには、銀河の合体時に起きる物理現象を観測する必要があるが、ガスやダストに深く覆われて観測することが難しい。 そこで今年度は、84天体の合体銀河に対し、透過力の高いX線、ダスト吸収により再放射される赤外線、星間物質による電波放射などを考慮し、独自に開発した多波長放射モデルを用いて、波長毎の放射源を網羅的に調査した。その結果、合体段階が進んだ天体ほど両者の成長が活発であることを解明することに成功した。さらにはブラックホールからの強い放射により噴出する「アウトフロー」により、莫大な物質が銀河にまで還元される描像を得た。現状の進捗は総じて順調であり、採択された科研費(スタート支援、早川幸男基金)も活用し、積極的に観測と理論の専門家との密な議論の元で地上望遠鏡観測(せいめい望遠鏡など)や多波長解析モデル開発(Yamada+23, ApJSで出版済み)に加え、論文執筆や国際学会発表も行った。 本研究では2023年度に打上げ予定のXRISM衛星の観測も重要となる。予定通りの打上げに向けて、自身が担当する定常運用監視ツールの開発も行い、パイプライン開発チームを代表して日本天文学会の春季年会でも開発状況の進捗を報告した。衛星開発も順調に進んでおり、観測後の対応についても共同研究者と密に議論を進めている。次年度からはXRISM衛星の観測による成果も報告できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、「合体進化における銀河とBHの成長過程の解明」を主題とした多波長観測研究を実施してきた。これまでには合体銀河の星形成・活動銀河核・アウトフローの活動を網羅的に調べ、Yamada et al. 2021, ApJS(67ページ)とYamada et al. 2023, ApJS(66ページ)の2本の長編論文として出版した。これらの成果を挙げてから、今年度の国際学会は全て査読付きで口頭発表(4件)に採択され、国内でもセミナー講演に招待されている。また、科研費も本スタート支援に加え、早川基金や若手研究にも採択された。これらの結果を踏まえ、発表してきた論文は国内外を問わずに非常に高く評価されてきた。同時にXRISM衛星の開発にも精力的に取り組み、初年度から正式なサイエンスメンバーへの昇格が承認され、さらには他の分野の実験チームからも共同研究の提案が増えており、自身の開発技術も十分な成果を挙げていると考えられる。次年度からはXRISM衛星やTAO望遠鏡の稼働開始の時期になるため、さらなる画期的な成果が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
次の段階として、アウトフローの多スケール構造の解明を目的とした研究の準備にも取り組む必要がある。アウトフローは合体末期において活発になることで、ブラックホールと銀河の両者に物理的な相互作用をもたらすと予想され、その影響を正しく理解することが近年の天文学における最重要課題の一つとされている。ブラックホール近傍は超高温な領域となり、アウトフローの高電離ガス成分がX線放射として検出できる。また、ブラックホールから遠ざかるにつれて、銀河の中心核領域からは電離ガスによる赤外線放射、銀河スケールでは低電離ガスによる可視光の放射が卓越する。アウトフローが噴出されてから銀河にまで伝播する物理を解明する上で、特にX線と赤外線で観測される中心部の強いアウトフローの定量的評価が重要である。そこで、来年度に打上げ予定のX線衛星XRISMの装置開発に携わりつつ、そのX線精密分光能力を活かしたアウトフローの運動量測定による新たな研究の準備を進める予定である。また、2024年度に稼働予定の東京大学アタカマ天文台(チリの世界最高標高5,640mに設置された6.5m望遠鏡)による高空間分解能赤外線観測の実施に向けて、望遠鏡の装置開発メンバーと共にサイエンス検討を進めている。望遠鏡の稼働開始も近くなっているため、実観測に向けた準備として、過去の高空間分解能の赤外線観測データの解析にも着手し、チリの観測所の現地に滞在して最新の性能や解析技術を確認しつつ、万全の体制を整えていく予定である。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Optical IFU observations of GOALS sample with KOOLS-IFU on Seimei Telescope: Initial results of nine U/LIRGs at < 0.042022
Author(s)
Toba Y., Yamada S., Matsubayashi K., Terao K., Moriya A., Ueda Y., Ohta K., Hashiguchi A., Himoto K. G., Izumiura H., Joh K., Kato N., Koyama S., Maehara H., Misato R., Noboriguchi A., Ogawa S., Ota N., Shibata M., Tamada N., Yanagawa A., Yonekura N., Nagao T., Akiyama M., Kajisawa M., Matsuoka Y.
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 74
Pages: 1356~1367
DOI
Peer Reviewed
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