2022 Fiscal Year Research-status Report
複雑構造周りにおける液滴蒸発後の溶質膜形状制御因子の解明
Project/Area Number |
22K20397
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 真 東北大学, 工学研究科, 助教 (60966852)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 気液混相流 / 格子ボルツマン法 / フェーズフィールドモデル / 表面張力 / 共役熱伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,1)固気液三相の温度場,気相中の溶媒濃度場,液相中の溶質濃度場,および液相の蒸発の全てを同時に解析可能な,汎用的気液混相流解析ツールの開発,2)開発した手法を用いた複雑構造周りにおける液滴蒸発後に形成される三次元溶質膜形状の制御因子の解明の二点である.2022年度には目的1)のうち,界面の大変形を伴い,かつ気液間の熱容量比が大きい気液二相流現象を取り扱うことが可能な,気液二相熱流動シミュレーション手法の開発を行った.本研究では,複雑構造周りにおける界面の大変形の計算に適した二相系格子ボルツマン法をベースとして手法開発を行った.開発した手法の計算精度を検証するために,周囲の気体と等速で運動する液滴のシミュレーションを行った.このとき,気液の密度比が大きい場合には,界面周りの速度場に大きな誤差が生じ,加えて熱容量比が大きい場合には,液滴周りで非物理的な温度分布を示すことがわかった.この問題は計算スキームがガリレイ不変性を満足していないことに起因すると考え,高次精度でガリレイ不変性を満足するキュムラント格子ボルツマン法を実装することで,問題の解決を図った.これにより,液滴周りの非物理的な温度分布の発生を抑制することができた.また,表面張力を考慮した計算では,表面張力の計算誤差に起因して,気液界面周りの速度誤差も大きくなった.そこで,従来手法において用いられる複数の表面張力モデルについて,計算精度の評価を行い,生じる速度誤差の小さい表面張力モデルならびに差分スキームの提案を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は,気液間の熱輸送の計算モデルの実装に際して,本研究開始時点までに開発してきた計算手法の見直しも迫られたため,当初の予定よりも遅れがある.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,2022年度中に開発した気液二相熱流動シミュレーション手法に液相の蒸発の影響を実装する.また,これを複雑構造周りの液滴蒸発過程に適用し,溶質膜の制御因子を詳らかにすることを目標として研究を進める.
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Causes of Carryover |
ワークステーション用GPUであるNVIDIA A30を想定よりも安価に購入することができたため,次年度使用額が生じた.次年度は当初の予定通り,2022年度に購入したものと同じGPUを追加購入し,研究の高速化を図る.また,次年度使用額は学会への参加費・出張旅費ならびに論文投稿料に充てる予定である.
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Research Products
(3 results)