2022 Fiscal Year Research-status Report
前立腺がん発生時における腫瘍微小環境の模擬・解析のためのデバイス開発
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22K20401
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗生 識 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (90966318)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / 誘電泳動 / 前立腺がん |
Outline of Annual Research Achievements |
がん患者の生存率向上には、早期発見が極めて重要である。がんの早期発見研究の発展には、がん発生時におけるがん微小環境の知ることが必要であるが、そのような環境を模擬するデバイスは提案されていない。そこで本研究では、本邦において罹患率1位である前立腺がんを対象とし、その発生時を模擬・培養するためのデバイス開発を行っている。がん発生時を模擬するため、正常細胞の中に一つの前立腺がん細胞を配置する。そのような細胞の培養系を構築するため、がん細胞を単一細胞レベルで配置する。細胞を操作するための技術として、誘電泳動を応用する。 2022年度はまず、細胞を効率的に配列するための、誘電泳動に必要な交流電圧と周波数の条件探索を行なった。最終的には電圧5V・周波数3.5MHzの条件で細胞を効率的に捕捉することができた。 次に単一細胞をトラップするための基板作製にとり組んだ。マイクロサイズの構造物を作るため、フォトリソグラフィ法を習得した。誘電泳動用の櫛形電極上に、細胞と同程度の直径(直径:10 μm)を有するwellを配列させた基板を作成し、マイクロ流路と組み合わせたデバイスを作製した。 作製したデバイスを用いて細胞の捕捉実験を行なった。細胞懸濁液を1 μL/minで送液し、予備実験で得られた条件で誘電泳動を行うことで、細胞をwell上へ配列させることに成功した。一方で、多数の細胞がwell以外の流路部分に非特異的に付着する問題にぶつかった。最終的に細胞懸濁液にウシ血清アルブミンを1~2%混ぜることで、この問題は解消された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で求められる、単一細胞レベルでの捕獲・配列を行う、という基本的な能力を有するデバイスを作製できたので、この点では概ね順調に進展している。一方で、電極上で細胞を培養することができないため、捕獲した細胞を改めて培養用の流路に移すことが必要である。このための細胞移送方法と培養方法を考案した。具体的には、細胞をwell上で捕獲したのち、デバイスを上下反転させ、wellが流路底面から天井に、流路天井が流路底面となるようにする。その後、捕獲した細胞に作用させていた誘電泳動をoffにし、細胞を流路底面に落下させたのち、接着させ、培養する。流路底面には予め、細胞の接着因子であるコラーゲンなどをコーティングさせておくことで、細胞の接着を促進させる。
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Strategy for Future Research Activity |
誘電泳動により捕獲した細胞の培養方法を改良することを先ずは行う。その後、培養した細胞の経過観察、細胞や細胞の放出する物質の解析を行う。そのためのプロトコル考案や実験を行う。解析を通じ、がん細胞が成長する過程での培養系の生物学的な変化を評価する。解析手法に関しては、研究室内の技術者と相談しつつ遂行する。
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Causes of Carryover |
デバイス作製や実験がスムーズに進んだことで、2022年度における消耗品の使用額が予定額を下回ることとなった。翌年度は、デバイス作製だけでなく、生物学的な解析も行う。そのための装置を有するスペースへの課金や、消耗品・試薬の購入に次年度使用額を充てる計画である。
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