2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating the displacement dynamics with a partially miscible system for application for CO2 sequestration and enhanced oil recovery
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22K20402
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 龍汰 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (00965692)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 部分混和系 / 相分離 / Viscous fingering / 流体置換 |
Outline of Annual Research Achievements |
相分離とKorteweg効果を伴う流体置換現象に主眼を置き、これまでの数値シミュレーションを発展させ、実験にて補完することで、部分混和系の流体置換の特性の更なる解明を目指すために、本研究を実施している。2022年度(1年目)では、まず、本研究の前提となる二種類の液体が混ざる場合でも存在すると考えられている弱い界面張力(有効界面張力)が、界面の流体力学的不安定性(ここでは二種類の流体の粘度の違いで引き起こされる二流体間の界面が指状に広がる現象(粘性フィンガリング))に与える影響を調査し、「流動の速度が大きくなると界面の流体力学的不安定性が増加する」という従来の常識を覆す結果を得た。本成果は界面の流体力学的不安定性を有効界面張力と流動の速度により制御できることを示すものであり、今後、本研究で顕在化された有効界面張力を伴う粘性フィンガリングの制御手法に関するさらなる実験的、数値的、理論的研究のきっかけになりえる。 また、同時に、本研究の主題である2種類の液体が完全には混ざらない「部分混和性」を利用した流動実験において、流体力学的な不安定性が抑制されることを世界で初めて発見した。これは部分混和性に由来して生じる相分離の際に、液体の流れが自発的に発生するためであり、完全に混ざる「完全混和」やまったく(ほとんど)混ざらない「非混和」ではみられない現象である。本研究ではその自発的な流れの方向を制御することで、2液体の間の不安定性(変形)の抑制に成功した。 地層からの石油回収プロセスや地層へのCO2圧入プロセスでは、液化もしくは超臨界CO2と水や石油は部分混和性になっていることがわかっており、本成果はそれらのプロセスにおける、部分混和性を利用した当該プロセスの新たな制御法の創出へ寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では大きく2つの成果を上げた。1つは完全混和系の流体力学的な不安定であるViscous fingering(粘性フィンガリング)における有効界面張力の影響を数値シミュレーションにて調査したこと、2つ目は部分混和系でのViscous fingeringにおけるKroteweg効果(相分離の際に自発的に発生する対流)の影響を実験研究にて調査したことである。これらの2つの結果は本研究での課題を多く前進させた。また、まだ研究成果としては発表していないが、部分混和系Viscous fingeringでの数値シミュレーションにて、流体力学的な影響や化学熱力学の影響を調査した系統的な研究成果もある。そのため、本研究の課題である「CO2地中貯留-石油増進回収への応用を指向した部分混和系流体置換ダイナミクスの解明」における基礎的な知見を得ることができた。こうした結果から、「おおむね順調に進展している。」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
真に実験と数値シミュレーションを比較し、実験での影響をシミュレーションで再現できるような取り組みを行っていくと同時に、実験でしかわからない・発見できない事柄を見出せるような実験をデザインしていく。 まず、実験での影響をシミュレーションで再現できるような取り組みに関して、台湾の研究グループと共同する。現在は実験を完全に再現できるようなシミュレーションのソースコードを調整し、部分混和系Viscous fingeringの実験を再現できるような段階である。コードが完成次第、流体力学的な影響や化学熱力学の影響をそれぞれ独立で調査し、系統的な研究成果を出していく。そうした結果を統一的に議論し、部分混和系流体置換ダイナミクスの解明を目指していく。 次に、実験でしかわからない・発見できない事柄を見出せるような実験に関しては、シミュレーションだけではわからない実際に起こる現象に焦点を当て、部分混和系流体置換ダイナミクスの解明につながるような新しい現象を発見する。これを達成するために、物理的な影響や化学的な影響を変化させ、その双方または一方がどのようにダイナミクスに影響を与えるのかを観察する。最終的には、実験研究での成果もシミュレーションコードの修正に組み込んでいくことで、部分混和系流体置換ダイナミクスの解明を目指していく。
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Research Products
(9 results)