2022 Fiscal Year Research-status Report
光デバイスの完全自動最適設計システム構築に向けた導波路解析ソフトウェア技術の開発
Project/Area Number |
22K20433
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
森本 佳太 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (00966872)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 光デバイス / 光導波路 / 電磁界解析 / 有限要素法 / 領域分割法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は光導波路解析の効率化を目的として、散乱演算子に基づく新たな電磁界シミュレーション手法の開発を行った。一般的な散乱演算子による解析では入出力ポートがセットになったブロック構造を縦続に接続することで最終的な出力特性を評価するのが基本であるが、本研究では長方形に分割した解析領域の4面にポートを設け、4方向への構造接続を可能とするように解析手法の改良を行った。昨年度までに独自に開発してきた有限要素法をベースとした散乱演算子法は、任意の導波路構造をメッシュ分割して演算子化するため汎用性が高く、これを拡張し4ポート接続を実現することで、解析領域を縦横に分割した新たな領域分割型解析を実現している。具体的には、従来の有限要素法の境界処理に、伝搬演算子を使った境界条件を定式化し、連立一次方程式から各ポートの入出力電磁界を計算する散乱演算子を導出した。開放系の領域を扱うためには、数値計算上の解析領域端からの非物理的な反射を抑圧する必要があるが、解析領域を囲うようにポートを配置する場合には、隣接ポート間の不整合による不要界の出現が問題となる。そこで完全整合層を境界条件に併用し、散乱演算子を生成する過程で完全整合層を除去することで、問題を解消した。また各入出力ポートごとに対応する演算子を効率的に生成するため、界の補間にラグランジュ関数を用いるように改良を行った。汎用的に利用されている従来の有限要素法解析との比較検討により、十分な精度で解析を行うことが可能であることを確認した。また反射波が伴わない構造において効率的な解析が可能な緩慢変化包絡線近似を適用した効率的な有限要素法について、解析領域内で生じる反射波を考慮した解析を行えるように、新たに前進波と後退波を多重化した散乱演算子法の開発を行った。これにより領域分割型解析と従来の有限要素法等との結合解析が可能になることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光導波路解析の効率化について、研究初期段階では一連の検討を行うためのプログラムを開発し、新たな数値シミュレーション技術について、その有効性と一定の知見を得ることができた。有限要素法に基づく散乱演算子法に関しては、定式化および解析手法のプログラムの実装を行い、その妥当性について明らかにした。特に問題として懸念していた隣接ポート間で共有する未知の電磁界と開放系領域の取り扱いについては、完全整合層との併用により解析領域内部に生じる非物理的な反射を抑圧するとともに、解析領域と入出力ポートを分離する工程でラグランジュ関数による未知の節点電磁界を補間することにより、ポート数を増やした場合でも散乱演算子を構築することが可能であることを検証できた。また、扱う導波路構造によって、より効率の良い解析アプローチを選択できるように、緩慢変化包絡線近似を適用した有限要素法に基づき散乱演算子を構築することで、局所的に効率的な解析手法を組み込むことが可能であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、新たな散乱演算子法による解析手法について、解析領域の領域分割とデータ統合処理によるシミュレーション技術について検討を進める。解析領域の接続は四方からの接続に対応するために、ポート間の接続を順次行えるようにアルゴリズムの改良を行っていく。ポート数は機械的に増やすことが可能であるが、ブロック構造を接続する場合には2ポートの場合に比べて計算量が増加することが懸念される。そのため計算量を減らしながら効率的かつ精度のよい接続方法について検討を行い、従来の有限要素法と比較して実質的な効率化が可能であるかを調査する。また散乱演算子法の応用として、緩慢変化包絡線近似を適用した有限要素法やビーム伝搬法との結合解法について検討を行う。2次元解析での有効性を確認した後、3次元フルベクトル波解析への拡張を行うためのプログラムを開発し、初期検討として解析の安定性について懸念される課題に取り組む。
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Causes of Carryover |
研究室立ち上げに伴って所属研究機関で一部既存ワークステーションを使用できる環境となり、主に2次元解析を行っている本年度の研究開発に耐えうるスペックであったため、本年度購入予定だったワークステーションに計上した分を、次年度の使用を予定しているハイスペックのワークステーション不足を補填するために繰り越すこととした。次年度は3次元の大規模解析を行うためワークステーションが必須であるために購入予定に変更はない。その他未使用額については当初計画より年度をまたいで後ろ倒しとなっている論文掲載料、学会出張旅費の出費に充てる。
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